藤松泰通「武道」を語る

2015年5月29日

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”達人道(2)”藤松泰通、「武道」を語る
聞き手:松原隆一郎(ビジネスマンクラス有志)
テープ起こし:嶋直美(5号)
2006年3月11日、於「さくら」

--:そろそろ武道の話に移りましょう。藤松選手の組手のかたちが変わったきっかけは、勿論、頭の怪我でし
ょうけれども、それだけなんでしょうか。具体的に言えば、合気道風というか、そんなになったじゃないですか
。別に何か理由はあったんでしょうか。

藤松:それは普通に今のスタイルで外人とやったら敵わんというのがありましたからね、やってきて。

--:だけど、普通の人なら別の変わり方をしたでしょう。もっとガードを上げるとか、組み中心にするとか。
それが合気道風の構えになったっていうのは驚きだったんだけど、いったいどこから出てくる発想なのかな?

藤松:でも、そういう話は昔からあった訳じゃないですか。あったのにそれがなくなっていくじゃないですか?
どんどん。塾長も仰ってますけど、野獣になった方が強いみたいなのは、おかしいだろうと思ってたんで。

--:なるほど。しかしやろうとしている方法は、これまでの大道塾の選手とは違うように見えるんですけど、
たとえばウエイトをやらないう理由は何でしょう?

藤松:ウエイト・・やんないすね。それだったら自分よりデカイ奴には絶対勝てないじゃないですか?

--:私はね、ウェイトに凝ってた時期に柔道を再開したんだけど、柔道選手って大半はウェイトやってないの
に、ちっちゃくても異常に体幹が強い奴とか、腹が出てるだけなのに腕力のものすごく強い奴とかいるよね。

藤松:そうすよね(笑)

--:足払いのタイミングがいい奴とかね、柔道は層が厚いからとんでもない化け物いますよね。で、アレ見て
たら、僕の稽古時間ではこれ以上ウェイトやってても意味ないって思ったんだよね。で、体幹を重点的に鍛えて
から後にもう一度でやろうと思って、・・後って一体、何歳になるんだよ?っていうのはある訳ですけど(笑)
まあ、藤松君は柔道やってたから柔道の状況は知ってるよね。だけど、きっと今言ったようなことだけじゃない
でしょ?ウェイト・トレーニングにも面白い点ってあるし、余程思うところがあるんじゃないかって感じるんだ
けど、その辺りはどういう事なんですか?

藤松:ま、それは、その人の感性とかあるかもしれないですけど、いろんな強い人いるじゃないですか塩田剛三
、佐川先生、宇城先生とか甲野先生とか、いろいろおられますけど、おっしゃってることはみんな一緒なんです
よ。ただ、その人の感性で言うから、言葉が変わるだけであって、言うことは全部一緒なんですよね。で、言っ
てることは競技してる人だったら一度は経験した事があることなんですよ。だから、その状態にいかに自分を持
っていくかなんですねよ。その最高の状態に。

--:それは体の使い方についてではないんですか?心の事なの?

藤松:心の事ですね。

--:心って言われたら、稽古とかで反復可能性があるかないかっていうと、なさそうにも聞こえるし、普通に
稽古していて、そこにいけるんですかね。

藤松:普通の稽古でも、ただ惰性でやるんじゃなくて考えながらやれば、そこまでいけます。考えなきゃだめで
すよ。ただ、やってただけじゃダメですよ。

--:ちなみに僕らは先週ここ(さくら)で、キックの(18勝16KOの)大月晴明選手の試合をDVDで観
ていたんですが、あの選手は、ものすごくいろいろと考えてる訳ですよねえ。当人と会う機会があって聞いたん
だけど、真夜中に名選手の技をビデオで見ながら、六時間もいろいろ構えを変えてシャドーしたりするらしいで
すよ。彼も基本的に合気道の構えなんですけど、とにかく「考えなきゃだめだ」って言ってました。藤松君、観
たことある?

藤松:あんまりないですね。

--:大月選手はともかくとしても、引き出しとか、考えるっていうのはどういうことなんでしょうか。

藤松:今まで、これがいいと言う練習法があるわけですよ、そうするとみんな、そればかりやっちゃうんですよ
ね。例えば筋肉を鍛えるとか、あるいは心肺機能を高めるとか、それでは違うわけですよ。

--:違うって、どういう風に違うの?

藤松:いろいろやって動いたからスタミナがついたんじゃないんですよ。この場合は、力使わなくても動く方法
を体が覚えただけなんですよ。体は勝手に覚えちゃうんですよ。

--:体は覚えちゃうからね。

藤松:そうなんですよ。それで、その結果、本人がスタミナついちゃったと思うわけであって、実はスタミナな
んて、そんなについてないんですよ。その体の別の使い方を覚えた方がいいと思うんですよね。そこに気づくか
どうかなんです。

--:大月選手もそんなようなこと言ってたな。

藤松:だから、そのちゃんとした正しい事を考えれば、できるんです。「正」って言う字は「一つ」に「止まる
」って書くんですよ。だから一つしかないんですよ。

--:大月選手の話を続けさせていただくと、観て面白いと思ったのは、キックの試合だから相手はみんなコー
チから習ったムエタイみたいのをやってるわけですよ。ところが習ったムエタイやってる人って(大月選手に)
習った以外の混乱させられるような戦法でやられるとグジャグジャになっちゃうんだよね。

藤松:岩木先輩のカポエラみたいなものですね。

--:そうそう。それにしたって、初めてやられたら相手はびっくりするよね?で、混乱した時に自分の頭で考
えてない人は修正できないままでやられちゃう。人に習って鍛えられてると、習ったムエタイとは全く違う引き
出しでからかうような人がやってきたら、戸惑っちゃう。藤松選手の場合は、その考えるっていうのは、どうい
うことなんでしょう。

藤松:力って言うのはいろいろあるわけですよ。例えば、相手がチャンピオンだと思う。そこでそう思ったら負
けてるんですよね、気持ちの部分で。強さも背負うものによって変わるわけですよ。指導員やってるとか会社の
社長とか、それで強さって変わるわけですよ。

--:それは北斗旗の中でも変わると。

藤松:変わります。というか戦い全部そうです。プロなんかはわかりやすいですよね?

--:確かに地元で強くて、アウェイで弱い人っているよね。

藤松:そう。土木の社長とコンピュータの社長じゃ、背負うものが違ってそれぞれ強さも違うって事です。

--:で、藤松君は今、何背負ってるの?

藤松:国ですよ、国。国が一番強いですよ。もっと強いのは人類です。

松原:日本背負ってるわけ?

藤松:そうです。そういうつもりで戦ったんです。

--:塾を背負ってんじゃないの?

藤松:あー、まー、その中に入ってますけど・・国ですから。

--:大道塾よりも日本国を背負って?

藤松:大道塾だけ背負ってたら負けましたよ。まあ大道塾にもいろいろと問題があって…

--:じゃあれだな。、大道塾じゃなくって、「全日本」空道連盟っていう時の「全日本」を背負ったわけだな

藤松:いやいやそうじゃなくて世界を背負ってるんですよ。

--:日本だけじゃなくって、世界?

藤松:ロシア人はプロじゃないですか、あいつら汚いですよ。一週間前に練習で道場に来て…

--:稽古を見せなかったんだってね。

藤松:いやいや練習の後も汚いんですよ。めちゃめちゃ。全然、片づけしなくて、そういうところはプロなんで
すよ。その後を自分らが尻ぬぐいで掃除するんです。で、自分は武道を少年部とか教えてるじゃないですか。礼
儀、掃除をして…そういう人間が、正しい人間が勝つっていうところを見せんなきゃいけないわけなんですよ。
そういう意味でも世界にアピールする為にも自分は勝たなきゃいけなかったんですよ。だから、例えばロシア人
が勝っちゃったら、プロが強いってことになっちゃうじゃないですか?あいつらみんなプロだから。
あいつらの為にも勝たなきゃダメなんですよ。チャンピオンが「大道塾のチャンピオンだ」って言われたら、
「あ、違うな」って思われるわけですよ。そこを背負っていたんですよ。塾長が「絶対勝て」って仰いますけど
、それは当たり前で、それ以上のものがあるんですよ。そう思ってやってました。

--:そういえば、北京に散打の試合で行ったときも、控え室でタイ人のいた周辺は汚かったなあ。やたらに汚
いんですよ。いなくなった後。そういう意味ではプロっていうとこあるかもね。彼らには勝つことだけが価値だ
から。

藤松:それは仕方ないんですけどね。プロってのは別ですから。

--:なるほどね。ではそれは分かったとして・・ところで、考えることが必要だとして、それをある程度プロ
グラム化しなきゃいけないじゃないですか、指導するには。新宿文化とかで教えているわけでしょ?どういう風
に、「考える」ってことを教えていますか。

藤松:あのですね…トレーナーになっちゃいけないんですよ。トレーナーじゃなくて、武道の先生なら、道場に
入ってきたら場の空気が変わるようにならなければいけないんですよ。だから教える人は、みんなが入ってきた
ら気持ちが変わるような、緊張感のある、そういう指導者じゃなきゃだめですね。

--:それでお弟子さんたちは考えるようになりますか?

藤松:そういう風にやると、その場の空気がよくなるんですよね。

--:その場というのが道場であると。僕は最近、嘉納治五郎の武道論を読んでいるんだけど、武道っていうの
は、ルールある競技だけど、他方ではルールの外の事を考える武術もあると。喧嘩のことです。そして武道には
もう一面あって、人間としてね、武道ってどういうことを社会に意味しているのか、知性の面であるとか、道徳
の面であるとか、そういうことを考えなければいけないと。3つ面を言ってるんですけど、それでいくと嘉納は
、今の武道っていうのは単なるルールあるスポーツに成り下がっていると嘆くかも知れないな。

藤松:単なるルールあるスポーツですか?

--:北斗旗にはルールがあって、その点ではスポーツなんですけども…「ルールがこれでいいのか」とか、「
もっと実践ってこうなんじゃないか」とか、いろいろ考える面ってあるわけじゃないですか?それを実践するか
どうかはともかくとして、少なくとも真面目に考えてみることが武術ですよね。しかし、それ以外にも道場を綺
麗にしなきゃいけないとか、先生が来たらしーんとした雰囲気にならなきゃいけないとか、武道には他の面もあ
るわけじゃないですか。藤松君はどこを一番重視しますか?武道としては全部重要なのかな。

藤松:んー文武両道ってありますよね?今の事で言ったら、別々になってるわけですよね。例えば、柔道が強い
。総合警備に入って、それで上の方になる。それは違うわけです。分離されてるわけです。例えば、道場で構え
て向かい合って、相手が何を考えているか分かる。

例えば仕事をしていて相手が何か言った瞬間に何を考えているか分かる。あ、あれですか?と。道場内で何を考えるか読むということを勉強して私生活に活かす。それが文武両道なんです。今は、別、別になってるじゃないですか。

--:嘉納治五郎もそう言ってますね。柔道で頭をちゃんと使えば、実生活でも役に立つって言ってて…ビジネ
スマンクラスの野々山さんも同じことを言ってて、空道を応用したら部長になれたって。(笑)…ちゃんとした頭の使い方ね。

藤松:お辞儀するのでも違うじゃないですか?「コンチワース」なんていえば相手は「へへえ」なんて感じだけ
ど、こちらがしっかり礼をすれば、相手も「ハハッ」て緊張するじゃないですか。ここでもう、相手をコントロ
ールすることになるんです。そうすれば、相手はかがっとは来ないんですよ。日本の文化って全部そうなんです
よね。正座とか全部そうなんです。礼をして、相手が仲良くなりたいな。って思うようじゃなきゃ。

--:ただ、武道を教えるのについて、一人の師匠から一人の弟子に伝える局面と、みんな集まって同じことを
する局面っていうのとがありますよね。前者は「ミット持ち日本一」の飯村さんの主張だとすれば、後者は塾長
が強調されるところです。みんなに伝えるのについては、確かに塾長の仰るように最低限マニュアル化っていう
か、様式化せざるを得ないでしょう?藤松君の考える、ベストの武道っていうものを大勢の人に伝えなきゃいけ
ない。その際の伝える方法っていうのは、どうやったらいいんですか?

藤松:それは、自分がその技を深めればいいんですよ。

--:自分が深めれば伝わる?

藤松:深くなると窓口が広くなるじゃないですか。

--:そうすると、みんなついてくる?

藤松:そうでしょうね。それはその自分のやり方もあるでしょうけど。ついてこなかったら自分が全然ダメって
ことですよ。

弟子がついてこないようなのはおかしいですよ。「この人だ!」っていう風にならなきゃだめです。
森先輩(横須賀支部長)が支部道場を始めたときなんて、荷物を持って道場に入って来られたら、道場生が「先
生、お持ちします」って言うんですよ。そうならなきゃいけない。荷物を持たせるっていう強要じゃだめです。
弟子が自分から持つようじゃなきゃ。

--:うーん。これは藤松選手が支部長として道場を持ったらどうなるか、ってことだなぁ。でも確かに、今、
長田さんのとこがそうだよね。お母さんが先生を下にも置かないって。長田さんは空手よりも武道教育をちゃん
とやりたいって言ってて、そういうのが伝わるんでしょうね。

藤松:そうするのがほんとうの武道の先生ですよね。強さとか優しさも一つの力ですけど、それにこだわっちゃ
だめですよね。それも大事ですけど、そういうのが全てではないですよ。

--:技術論としてはどうですか。全然出て来ないけど。

(ギャラリー):合気道とか古武術とか藤松選手が参考にしたと思われるものはいくつかあるけど、今の組手の
スタイルを完成させるまでに一番参考になった他の格闘技って何でしょうか。

藤松:昔の人の話は全部参考になりますよ。例えば、こうして話しているだけで自分は参考になることを探して
いるんですよ。だから年上の人はみんな師匠とかって言いますけど、当たり前の事ですよ。

--:だけどいちおう技術論ってあるわけじゃないですか、技術を論じること。「空道入門」だって技術書だよ
ね。大東流の四股って相撲とは違うっていつだったか藤松君は仰ってましたよね。大東流の四股を踏むとどうい
う効果があるのかとか、そういう技術論ってあるでしょ?どういう風に稽古するのがルートとして良いのかって
いう。参考にされたものってなんでしょうか。ビジネスマンの皆さんも木刀振ったり四股踏んだりするのがよい
ですか?

藤松:その人その人によって窓口が違うんですよね。人生も。感性も。

--:だから一概に言えないってこと?

藤松:一概に言っちゃいけないですよ。これだって言ったら、それに固執しちゃいますよ。

--:じゃ飯村さんはムエタイという扉を開けているが、その門から入りたい人は入ればいいということかな。
ムエタイに「決める」のがいけないと。

藤松:でも、ついてくる弟子がいればいいんじゃないですかね。

--:どんな組み手を選ぶかは各自が自分で考えることだよね。

藤松:そうです。自分です!自分!例えばブランド物だからなんて買うってんじゃダメですよ。

--:なかなか具体的には教えてくれないから、質問を変えてみましょう。

藤松君がこの3年間、参考にしてきた武道っていうと、どんな流れだったのかな?あの手のことをいくつか思えてよ。

藤松:んーやってみたものはありますけど、意味ないやっていうのもあるんですよ…だから、そんなのが、みん
なに意味があるかわからないですよ。

--:まぁ、そんなに勿体ぶるなよ~。もうちょっと教えて下さいよ。

藤松:やっぱり剣振るのはいいですよね。

--:振り方ってあるんでしょ?

藤松:振り方はこう…持った時に重さを感じちゃだめなんですよ。上手い人は剣と体が一体になってるっていう
じゃないですか?だから、そういう風に振るんですよ。
だから、分からねえよっていうんじゃなくて、難しいからやらないといけないんですよ。例えば難しいから、
レベル低くして方向変えようとかはダメなんですよ。難しいものをできるようにしなかったらダメなんですよ。
軽く持ってても、自分が重さ感じてるっていうところで体が過敏に反応できるようになってるわけですよ。

--:振ってみて剣の重さを感じない体の使い方がいいと。

藤松:そうですね。一体になるんですよ。例えば、相手を崩す時もそうですよ。投げるときに腕だけ引っ張って
も相手は崩れないですよ。腰から全体を引くと崩れる。宇城先生とかは「相手に入る」って言うんですよ。それ
で引くと力も要らないですよ。ぽーんと投げられる。

(ギャラリー):藤松先輩のスタイルは普遍化できないものなのか、もう一つは藤松先輩は藤松先輩一代なのか
?っていう、疑問があるんですけど…。気持ちの中で藤松先輩は一代と思っているのですか?藤松先輩も先生になられるわけですから・・

--:やっぱりマニュアルが作れるのかって話だよな。スタイルとして唯一のものはないって話なんでしょう。
宗教で言っても、窮極は一つしかないにしても、そこにたどり着く道はいくつかあるのか、それとも藤松という
一本道しかないのか。山を登ろうとする者は、先生から何かアドバイスが欲しいわけですよ。

藤松:それがまた修行になるわけですよ。大道無門って(いう理念が)大道塾にはあるんですけど、まさにその
通りなんですよ。だから大道に至るには門はない。どっから登ってもいいんですよ。道を外れそうな奴がいたら
そこを注意する。これが自分の修行になるんですよ。今、そいつは心がどこにあるのか、わかってやる。

(ギャラリー)では先輩の弟子がムエタイのスタイルでも構わないんですか?

藤松:いや、それはそれで勝てればいいんですよ。ああしろ、こうしろとは言いますよ。

--:まあ、ムエタイだって、日本人がやると似たスタイルになるけど、タイ人は実は多種多様だよね。アヌワ
ットみたいにローとパンチしか使わない北斗旗スタイルの選手もいるし、アタチャイみたいにミドルが切れまく
るのもいるし。いろんなスタイルがあるという意味では藤松君の言ってることと変わらないんだけど。

藤松:ムエタイの中にもそんなにいっぱいあるのに、それプラス投げ、関節があるわけですから、つかみも、沢
山ありますよね?そうしたら、もっと広くなりますよね?だから大きく見なきゃダメですよ。自分なんて頭を守
らなきゃいけないのにロシア人なんて何やってくるか分からないんだから。

--:でも、頭に攻撃を受けるのがまずいっていうのに、手を下げるっていうのは、普通の考え方では逆でしょ
う?どういう事なんだろう。

藤松:それは技術的な話になりますけど、こう…前で構えて打ってやると相手は固まるんですよ。これは武道で
「居着く」っていうんですけど。こういう状態だと相手は反応できないんですよね。それをやってるわけです。
相手は当たんないのに蹴ってきたり・・

--:それは普通にいう距離感ってこととは違うわけですか?

藤松:それは、距離がすんごく遠くてもできるんですよ。近くても出来る。だから目に見えないものなんです。

--:リラックスするってことかな。

藤松:いや、日本語で言った方がいいですね。透明、空気になるんですよ。自然と一体になる。重さがないんで
すよ。そうすると体が自由自在に動けるんです。そうすると相手が「居着く」から。そうしたら、ポンって打つ
と。

--:じゃ、セーム・シュルトとかは、どう思いますか。セームとやったらどうしますか。彼は実は空道ルール
が一番強いんじゃないかな。それでもパンクラスでもK-1でもトップに立ったんだけど。藤松選手はセームと
はやってみたいとか思いますか?

藤松:セーム・シュルトとはやりたいですねえ。面白いと思いますよ。考えるのが面白いですよ。金的とか織り
交ぜたりして。たまんないですよ。

--:でも、頭を膝で狙われるよ。

藤松:大丈夫ですよ。膝は肘ブロックで、相手が自分で壊れるようにする方法がありますから。

--:えーっ、それはどういう風にやるの?

藤松:こうやるんですよ(と、実演)。受ける自分の手は鋼鉄になるんです。丁寧にやるってことですね。そう
しないのは横着なんですよ。

--:丁寧にやるということは、基本をちゃんとやるって事ですよね。だけど、その基本っていうのは大道塾の
基本じゃないよね?柔道の基本とか、キックの基本とかも加味しなきゃいけないんでしょ。

藤松:いや、それでも構わないです。

--:じゃあ、一般道場生が大道塾の基本だけから発展させるとすれば、どういう風なことを考えればいいです
か?

藤松:それは簡単ですよ。ゆっくりやるんです。小川先輩も言ってますけど、ゆっくりできれば誰でもできるん
だって。それと一緒です。丁寧にやると気持ちが入るんですよ。気持ちが正しければ形は関係ない。ローでも丁
寧にやると気持ちが入るんですよ。

--:フォームに気をつけて蹴るってこと?

藤松:いや、そんなことも関係なくなるんですよ。気持ちが入れば。相手よりも先に自分が行けるから、打てる
んです。入るんですよ。

--:それはボクシングのチャンピオンでもやってるんですか。

藤松:それは全部同じですよ。野球でも卓球でも。だから何を見ても勉強になるんですよ。カーリングでも。心
が正しければ体は関係ないんですよ。「後の先」でも、自分が先に行くし。「先の先」ってのもあります。自分
だけが先に行くんです。

【武道編】

人生編につづく