八島有美「石の拳と呼ばれて」(前編)

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<ボクシング生活について>

--どうしてボクシングを始めようと思ったんだろう?大道塾の稽古の流れから説明すると、どうなりますか。

八島:4級に上がって、極真ルールの組手と変わったので、ボクシングをやってみようと思って…

--それは、あくまで空道に活かす為ということ?

八島:そうですね。

--それが昂じてプロにまでなっちゃった、と。それまでの経緯は、どうだったのかな?

八島:初めはゴールドジムで、スポーツクラブなのにサンドバッグが吊るしてあったのでそれに惹かれて教室に入ったんですよ。一般の人向けのボクシング教室みたいな感じでした。女子にプロがあるのも知らなかったし、初めはプロになるためとかは考えていなくて。

--じゃあ、最初は団体で習っていたんですね。でも試合に出るとなれば個人指導でしょう?

八島:試合が決まってからマンツーマンになっていきましたね。

--ボクシングのアマ大会に出たっていうのは、どういう経緯だったんですか。

八島:最初は女子に試合があるなんて知らなかったので、ただ練習してたんですけど、アマチュアの大会があるっていうので出たんですよ。ボクシング雑誌で開催を知ったのかな?で、力を試してみたいと思って出場しました。当時はアマ大会も関西の方でしか開催してなかったので、神戸の会場まで行きました。

--あ、それ聞いたことがあるよ。阿佐ヶ谷のブルース・バーの女将さんが昼間にロイヤル小林のジムに通ってて、関西で試合に出るって言ってた。

八島:それですね、きっと。で、その会場でプロの協会の人にスカウトされたんです。判定勝ちでした。

--ボクシングを始めてから何年ぐらいのことですか。

八島:プロになるまでは2年くらいだったかな。

--プロ・ボクサーになるときに、塾長は何て仰ってましたか。

八島:まぁボクシングだったら背後に怪しい団体も絡んでないだろうけど、大道塾の黒帯だっていう自覚は持つようにって。

--それからは空道と並行してやってたんですか。

八島:そうですね。

--ボクシングで一番思い出に残る試合っていうのはどれですか。

八島:やっぱり高野さんとかタイトル戦ですね。

--なるほど。フライ級の初代チャンピオンを争った試合ですね。その試合でとくに記憶に残っていることというのは?

八島:10ラウンドだったことですね。

--僕もあの試合は観戦したけど、後半がんがん打ってたよねえ。よくスタミナが切れなかったよね。

八島:それは走ったり、サンドバッグを連打したりしたから…。

--そういったトレーニングは大道塾でスタミナをつけるためにやるようなのとは違うんですか?

八島:トレーニング法は特に変わらないと思います。スタミナをつける方法は競技によって違うというより、個人で違うんじゃないでしょうか。ボクシングは最初から10ラウンドとかってラウンド数が分かってるし、ペース配分などを考えられて楽ですね。むしろ、スーパーセーフは苦しいなあ。何か大道塾ルールって疲れますよね。なんでだろう?

--練習は、どんな感じでこなしていたの?

八島:大道塾は週1回で、ボクシングはほとんど毎日、週5ぐらいかな。朝は毎日走ってましたね。午後にジムで3時間ぐらい。

--ボクシングって普通はそんなに長くないでしょ。

八島:2時間ぐらいですね。でもゴールドジムって何でもできるので、ウエイトとかランニングとかいろいろ含めて3時間やっていました。

--ボクシングっていうのは、蹴りとかもないし、選択肢が少ない中で技術を磨きますよね。たとえば捨てパンチとかも多いの?

八島:多いです。全部全力で打つのは良くないですね。スタミナも早く切れるし、そんなに全部当たるわけじゃないし。

--コンビネーションの中で強弱をつけると。

八島:そうですね。

--ボクシングの戦略と空道の戦略って、違いはありますか?

八島:ボクシングは1試合だけで、トーナメントじゃないですから集中して全て出し切れますね。空道はトーナメントなので次の試合のことも考えなければならない。それから空道の女子の試合は2分なので、2分で何ができるんだろうっていつも思っていました。それでは、戦略は作れないですね。とにかく行くしかない。

--なるほど。で、ボクシングはちゃんとコーチがついて、きっちり試合に臨んでいったわけですね。

八島:相手が日本で試合やったことのある選手だと、コーチに従うというよりは自分でビデオ観て、いろいろ分析したんですけど…。

--マンツーマンっていうのは大道塾ではないことでしょ。それについては何か新しい経験とかはあったりしましたか。大道塾でも、これからは変わっていくと思うんだけど…支部長によってはコーチに近くミットを持つ方もおられるしね。

八島:コーチがついても自分の考えがあれば、言われるままじゃなくて、自分の判断でやっていけるんですよ。とりあえず聞いてはおくけどやらないとか。

--へえ。ボクシングはコーチの言うことに絶対服従かと思っていました。結構、自由度が高いんですね。

八島:言い合ったりもしますよ。でも試合直前だと、メンドくさいから とりあえずは聞いておいて…。

--移籍したり、コーチが変わったりしましたよね。あれは、どういうことなんですか?

八島:方針の違いとかもあったし、大道塾の事をかなり責められたんですよ…。

--プロが別の競技をやってるってことですか。

八島:はい。もうやめろって。

--でも、結局は大道塾は辞めなかった。どうしてですか?

八島:好きだからですね。

--いいねえ(しんみり)。女子ボクシングの看板を背負っているのにホームページにもいつも大道塾の話題を載せてくれていて、感謝していますよ。…あと、所属ジム自体も変わりましたよね、ライカ選手も所属している山木ジムに。何かあったんですか?

八島:大人の選択ですね。ジムといっても、小さなジムだと言い分が通らないし、タイトルマッチを組んでもらうにも有利かなぁ、と思いまして・・・。

--へえ、そんなことだったんだ。ではボクシング人生は納得のいったものだったですか。

八島:ボクシング人生で試合はいつまでするのかっていうと切りがないですよね。最後の試合で頭に怪我をして、塾長に「もう試合ができない」って言に行ったら、「怪我をしないと選手なんて辞められないんだよ」って仰ってくれて。「みんな一生やりたいし、俺だって今も試合に出たいし。怪我がないとみんな辞めないんだから、しょうがないだろ」って。それで心が決まりました。まぁ「やりたい」って言ってもしょうがない状況だったんですけど。

--塾長が仰ると納得できるよね。なにしろ、90年代の後半だったかに忘年会で熱海に行ったときに僕たちが「世界大会を開きましょうよ」って囃し立てたら塾長は嫌そうな顔をして。どうして嫌なんだろうと怪訝に思っていたら、「だって俺が出ない試合のためになんで苦労しけきゃいけないんだよ~」って。ちょっと涙目で返されて。「ああ、この方は本当に試合がお好きなんだな」と思いましたよ。だから説得力がありますよ、その話。
ところでボクシングっていうのは、頭部以外にはどんな種類の怪我をするんですか?

八島:すごく汗をかくので、結石になりやすいんですよ。私の場合は試合の3日前くらいに入院して、簡単な手術して。その後、大道塾で腕を折ったこともあります。

--ええー?試合前に?いったいどうしてそんなことになったの?

八島:青帯の男性で、私とは一度しか会ったことがない人なんですよ。ミドルを蹴られて、肘で受けたら折れちゃった。それから一度も会っていないから、あの人は私の人生に、腕を折るためだけに登場したんです。顔は忘れましたが名前だけは覚えてます。K・Kです。一生忘れません(笑)。

 

<WARS6(2002.7.17)の総合格闘技戦をめぐって>

--では、空道というルール自体に関しては、今はどう思っていますか?

八島:面白いですねえ。

--女子部の空道ってなると、八島さんの試合はどうしても岡さんとの決勝ってことになっちゃいますね。

八島:私はどっちかっていうと打撃が好きなんで、空道だとグランドは30秒限定だから、何とか凌いで打撃でっていうのは、ずっと考えてたんですけど。

--じゃ、空道ルール自体は続けていけたらやりたかったと思ってるの?

八島:そうですね。寝技も最近は面白いかなと。

--空道の試合で優勝した試合で何か思い出はありますか。

八島:やっぱり打撃にかんしてばかりですねえ。

--そういえばフランス人(ステファニー選手)と総合ルールでの試合もやりましたよね。

八島:はい。

--あれ、頭にきたんでしょ?

八島:(苦笑)。ボクシングとかキックとかは厳密にウエイトを分けて、1、2キロでも厳密に計量するんですよ。

--相手は事前に約束した体重より重かったの?

八島:55キロ契約だったんですけど、59キロで来たんですよ。だから4キロオーバー。それって最初から落とす気ないってことですよね。でも、ここで逃げたくないな~って思っちゃって。空道は基本的に無差別っていう感覚があるので、5キロぐらいで逃げてたんじゃ自分的に情けないなというのがあったのでつい…

--確信犯だな、そいつ。たしか「ステファニーちゃん」って「可愛い対決」って話だったのに、実際はずいぶん図太い奴だったんだな。で、結局どうなったんだっけ?ハンデをもらえるように主張したの?

八島:しなかったんですよ…。私の甘さですね、今考えると。

--ボクシングでは、ありえないことだよね。

八島:ボクシングでは、試合が成立しないですね。

--うーん。それでもつい飲んで試合しちゃったと。打撃はどんな手応えでしたか?

八島:相手がサバットのチャンピオンって事で、サバット教室を探して通ったんですよ。サバット特有の蹴りの癖を覚える為に…。最初は様子を見ていて、蹴りのラインとかスピードとかがわかったので…パンチは結構当たってたとは思うんですけど…(試合は、袈裟固めからの腕ひしぎ膝固めでステファニー選手の勝ち)

 

<空道女子部の稽古方法やルールについて>

--では、今後は空道に関しては、どういうふうに取り組んでいきたいと思っていますか?もしくは女子部への期待でもいいんですけど。

八島:ん~いろいろありますが…。

--僕らは配慮できなかったんですけど、八島さんたちが中心になって、女子部の待遇改善を主張されたじゃないですか?防具についてとか。

八島:女子は両極端で、試合やりたいっていう人と、ちょっと試合はっ…ていう人と。だからフィットネス感覚の人は防具をしっかりつけたいって言うし、試合時間も1分でいいとか…。でも自分たちは、1分じゃ何もできないし、女子の試合でありがちな我慢比べで、間合いもなく終わっちゃうので「2分はどう」って言ったら、反対側は「2分も持たないも~ん」って…。

--今はもっと極端になってて、女子部には試合に出たくないって人も沢山いるんですよ。ただ、僕はね、全員ひとまとめにして同じクラスで教えなきゃダメだと思うんだよね。分けていくと無限に分かれてしまうから、誰は来るなとか言うと毎日稽古ができなくなっちゃうじゃないですか?社会人だから稽古はできるときにやらないとできなくなっちょうんで、道場は誰がいつ来てもいいようにしないといけない。その点、本部は使い勝手が悪くて・・・(4月から毎日のメニューが改編になり、この点は大幅に改善されました)。
だから八島さんや岡さんみたいに試合をしたい人は3分のワンマッチでとか、そうじゃない人は1分でとか、細かに条件を変えればみんなが試合に出られると思うんだよね。
日々の稽古は、どんなルールでやればみんなついてきてくれると思う?

八島:やっぱり皆さん同じでって訳にはいかないですね。ん~…個人の考えで分かれていけばいいと思うんですけどね。

--じゃあ試合はどんなルールにすればよいですか?

八島:やりたい人に関しては男子に近くして欲しいです。3分まではやる必要はないかもしれないですけど、せめて2分はちゃんとした空道のルールでやるべきですね。それから女子部全体を3つくらいのグループに分けたらどうでしょう。ガチでやっていきたいっていう子と、ちょっと試合やってみたいっていう子と、試合は出たくないっていう子と・・・。

(後編に続く)

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