突然ですが・・・
投稿者:牧登@総本部
すでに読まれた方もいらっしゃるとは思いますが、
最近、新潮社から出版された
『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』
というタイトルの本はものすごく面白いです。
不世出の柔道家、木村政彦先生の伝記を
いくつかのエピソードごとに章立てして
ドキュメント風に描いたものですが、
それがそのまま明治以降の日本の格闘技史に
なっているような感じです。
東先生もインタビューで登場していますし、
あとがきには松原師範代も
取材や編集に協力されたことが記されています。
いろいろな話が展開している中で
思わず「ほーっ」と唸ったのは
講道館の創始者の嘉納治五郎先生は
現在の柔道ルールでの試合は
「自分の考えとは違う」として批判的だった
というエピソードです。
その理由は、相手の突きや蹴りを想定せずに
いきなり掴みにいくのは実戦的ではないと考えたからだそうです。
同様に大正、昭和にかけて
実力的には講道館を凌駕していたとも言われる
高専柔道にも批判的だったとのこと。
その理由は書いていませんが
最初から引き込んで寝技にいくのは
同様に実戦的ではないと考えたからではないでしょうか。
つまり嘉納先生が理想とした格闘技って、
今の柔道よりも空道に近いんじゃないかなと
勝手に思ってしまったのですが・・・。
当時は今のような拳サポやヘッドギアを
作る技術もなかったそうですが、
もし、あったとしたら
その時点で空道に近いものが生まれていたのではないかと・・。
まだ、半分ほどしか読んでいないのですが、
この先、読み進むのが楽しみな本なので
ちょっとだけ紹介させて頂きました。
押忍 💡
ディスカッション
コメント一覧
牧先輩、本を紹介してくださってありがとうございます。
面白く読める本に始終飢えておりますので、こういったご紹介は大変助かります。
以前、佐藤先輩(Welcome back to Tokyo !)が今野敏の本を紹介してくださって、これまた非常に助かったものでした。
「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」こちらもぜひ読ませて
いただきます。
先ほど確認しましたら、アマゾンでは売切れ、ジュンク堂では在庫僅少だそうです。
凄い人気ぶりですね。
嘉納治五郎については、私は↓この本を読んだことがあります。
嘉納治五郎―私の生涯と柔道 (人間の記録 (2))
日本図書センター刊
これはご本人が書かれた自伝ですが、牧先輩の考察にはポンとひざを打つものがあります。
松原隆一郎です。
牧さん、ご紹介ありがとう。増田さんの労作ですよ。私の意見は数カ所、本文に出てきます。
ただ、嘉納治五郎が打撃に関心があり競技としての柔道は誤った方向に行ったと考えていたこと、寝技は集団で攻撃を受けるから(引き込みが悪いわけではない)寝技の続く高専柔道は止めさせたがっていた(わざわざ京大に出向いて命令しようとしたが追い返された)こと、等は私の『武道に生きる』に出てきます。
というか、嘉納がそういう文章を残しているのを、講道館は知らないのか、無視しているのですね。
私の例年の主張は、講道館は空道のような護身術を「研究部」で研究せよ、というものです。これは雑誌の対談で発言しているのですが。もちろん講道館は無視しています。
もっとも、講道館長に会って挨拶しても目を見て返事されたことがないので、ひょっとすると発言内容については知っているのかもしれません。
知人によると、私が上村さんを「カミムラ」と呼びかけたことがあって、それが原因だとも・・ 😀
これもタグが下がったので、上げるためにコメント。
私のこの本の読みは、ゴング格闘技の次号に出ます。
木村政彦の汚名を雪ぐ闘争には、秘案があります。ご覧下さい。
ただ、通常この本で読者が受け取るような、「力道山は八百長の約束を破ってシュートをしかけた酷い奴」という読み方は誤りです。プロレスなのに途中で真剣勝負を仕掛けたというのは前○vsアンドレ、佐山戦と言われていますが、それとはまったく異なります。
本文中にも出てきますが、「八百長で自分は負け役にされてきたが、次は真剣勝負をやる」とわざわざ新聞社に出向いて告知し、試合を盛り上げたのは木村先生です。それでいて、裏で八百長の約束をしてしまいました。私はそれを、「メタ・プロレス」と呼んでいます。力道山は、裏の約束は破りましたが、新聞紙上での観客との公約(ガチンコで勝負をつける)は果たしました。後になって裏には約束があった云々という木村先生が女々しいのです。木村先生は、観客との約束は破りました。
ただ問題は、どうして木村先生ともあろう方がそんなことをしたのかということです。この本は膨大な新発見をしていますが、それが解け切れていないところが凄いのだと、逆に私は思ってしまいます。なにしろ試合当日、力道山の様子がおかしいと、セコンドやアナウンサーまでが気づいていて、木村先生だけが「大丈夫」と鈍感だったのです。
妻を病から救うためお金が欲しかったのだ、という話もありますが、それだけでも説明がつきません。ブラジルで儲けたりしたのに、何故か帰国しています。プロレスは海外だけにすればよかったのに。日本で負け役を披露したあたりからおかしなことになります。
巨大な謎が残るところが、この本の面白みですね。
ちなみに力道山を慕う人はファンや弟子筋以外にはあまりいませんが、木村先生を慕う人は沢山います。矛盾も含めて、人間的な方だったのでしょうね。