清水和磨「ラスト・サムライ in 空道」(その3)
選手への注文
–:その意味では、昔は指導システムがなくてもスパーで強くなったからね。今はシステムがないと強くならないんですよ。
清水:前のやり方でやってたら当然、絶対人は集まらないし、そこはわかってるんですけど自分は多少そこを担当しなきゃいけないっていうか。全部がそうなっちゃったら…
例えば他の支部のやり方とかだったら色々あっていいと思うんですけど、本部までが全部なくなっちゃったら、なんて言うか複雑ですよね。
こんなこと思ってる人もいないと思うけど、なんていうか昔の感覚というか、今は森先輩が遠くで支部を始めちゃったし、高松先輩も始めちゃったし、斉藤先輩も来ないし、だからもう誰もいないですからね。山崎先輩とかはかろうじて、稲垣先輩とかもいますけど・・現役となると自分しかいないんで・・自分もできてるかわからないですけどね。
–:僕らから見ると、要するにプロな訳ですよ、寮生っていうのは。でプロ以外の選手っていうのはお客さんな訳ですよね。ボクシングやキックのジムなんかは、昔はプロしかいなかったでしょ?そのプロモーションだけでやっていけたから。でも人気がなくなってきて、空いた場所に素人のレッスンを入れるようになった。これは実は空手がやってきたこととと同じですよね。この十年くらいかな。
でも、そこでプロがアマを殴るなんておかしいでしょ。アマのトップ選手ならともかく、プロがお客さんを殴るのはおかしい訳ですよ。お金払ってもらってるんだから。で、その相手が望んで殴ってくださいってんならともかくそこまで強くなることを望んでなくて、ちょっと試合に出たいくらいで、試合に出たら覚悟はあるかもしんないけど、普段まで殺されたくないと思ってる人を殴るのはちょっとまずい。お金を得ている社会人としては。だからそれに不満を持ってるなら、それはちょっとお門違いじゃないかという気が僕はしないでもない。
清水:いや違います。不満じゃないですよ、それを残した方がいいんじゃないかってことです。1日とか・・、でもやっぱり危険な事をやってるのだから最低限の稽古の「量」は必要です。
–:いやいや残した方がいいのは分かるんだけど、それはあくまでプロのクラスであって、そこに人が入ってこないのは営業とかが悪いんで、アマに強いることはないんじゃないかっていうことなんです。問題はプロに人が入ってこないことなんですよ。
清水:今はいないですからね・・
–:寮生がいないことが問題。だから他のやつらに求めてもしょうがないですよ。
だから今後の問題は寮生をいかに増やすかですよ。増やすシステムを作るしかない。
清水:ただ今は無理です。来ないです。あ、堀越が来ましたけど。
–:彼はなかなか気がきくよね。でも、20年前は最前線にあったんですよ。格闘空手なり、空道は。それ自体はルールとしていまでも通用しますよ。商品は良いのに、売れない状態なんだよね。それって、営業が悪いっていうことでしょ?
僕らがシステムをどんどん進化させて行ってですね、観客も要望を受け入れて大切にしてきたなら、代々木をある程度までは埋めることが出来たと思うよ。でも、観客にはほとんどまともにサービスしなかったし、パンフは金とってるのにメチャクチャだし、進行もうまくないし、見て楽しめないようにわざわざしてる。もともと面白い競技でしょ?
清水:面白いですね。わかる人が見たら。
–:うん。たまたま来てくれたお客様に帰れといわんばかりの扱いをして、みんなが嫌になって来なくなって、ネットにそれをボロクソ書かれると。どんな商品だって売れないですよ。好意を持ってる人も遠ざけたんだから。 本来いい商品なんだから、15年くらい前から毎年当たり前のように改革していればお客は維持できてたと思いますよ。もちろん、ある所で増えなくなる時期は来たと思うよ。総合とかがでてきたから。
清水:うーん、ただどっちにしても集めるのは難しいと思いますね。 最近、似たような境遇の人とか会ったりして、そんなに莫大な金額もらってる訳じゃないんですけど、彼らのモチベーションっていうのはやっぱり人前でやったりとか、ファイトマネーで。それはうちらは関係ないっていうか、それが最終目的じゃなくてっていうイメージでやってた訳ですよね。だけど今の世代っていうのはそれがないとだめな人間がすごい多くなってるんで・・
–:でも昔の大道塾はかなり露出してたでしょ?
清水:そうです、だからあの当時に入ってきた寮生の人たちっていうのはそういうのがあったと思うんですよ。例えば雑誌に載ってる有名な団体ってことで知って入った。でも今は逆にそれはないわけじゃないですか。
–:ほとんど何にもないからね。
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