第36話:怒濤の3級挑戦編 その3 =1つの戦いが終わり、また始まる=  

門間理良の黒帯への階段

【澤井さん&篠塚さん】
 冒頭部分の試合で圧巻だったのは、澤井さんと篠塚さんの戦いであった。

 重量級同士の戦いで実力十分の二人だったが、組み合っての投げからすばやく腕の関節を取っていった澤井さんが見事に一本勝ちを収め、東塾長以下皆の拍手を受けた。

 篠塚さんはこの試合で脱臼されたため、その後の試合はリタイアとなったのは残念だった。澤井さんの快進撃は当分続きそうな気配である。

【木下先輩】
 木下先輩は足親指骨折というハンデを抱えて昇段審査に挑まれた。私が目撃したのは、基本ルールで体力を消耗しながらも果敢に攻めかつ耐える先輩の姿だった。

 いつもの稽古では、がんがん押してくる木下先輩が、あそこまで体力を消耗するのだから、昇段審査がいかに過酷なものかが良くわかる。

【杉本先輩】
 道場の最前部あたりで控えていると、後ろの方で杉本先輩の唸りとも悲鳴ともつかない声が響いてきた。腰を上げて見ると、なんと寝技の攻防の中で下になっている杉本先輩の姿が!! 

 あわやタップかというところだが、周囲にいた皆が「タップすんな~!」の大合唱!! なんとか耐え切った杉本先輩。おめでとうございます!!

 今回の昇段者のなかで、格別の賞賛を受けている杉本先輩ですが、それもある意味当然ですね。

【槙山先輩】
 今回の昇級審査では基本・移動の号令のほか、主審の大役もなされていました。私などから見ると、総本部の先輩が有利かなと思えるような展開でも、「引き分け」になさることが多く、非常に厳格な判断基準を適用されていたという印象を持ちました。

 そんな槙山先輩だったからこそ、皆さんの昇段を本当に喜ばれていました。
 
【対照的な二人(酒井先輩&堀越さん)】
 堀越さんは試合の際、タイムキーパーをされていた。時々組手がもつれて、折り畳み椅子に腰掛けている東先生の方に受審者2人が迫っていくと、さっと間に入り盾になりながら、冷静沈着にセコンドの役目もやっている。

「パンチから蹴りに入って。ハイ入りますよ。レバー狙いましょう」

などと総本部の受審者に淡々と的確なアドバイスを送り続けるのである。チャンピオンは名セコンドでもあった。

 この「静の堀越」と対照的だったのが酒井先輩である。

 それはもう熱いアドバイスを送り続けているのが、反対側にいる私にもしっかりと見て取れた。

 なにしろ寝技のときなどは、主審の槙山先輩の前に出て行って、怒鳴るようにアドバイスを送り続けるのである。たしか時計も持っていたような気がするのだが…。

【審査を終えて】
 結局、私は3級に合格させていただいた。ただし、「全体的に不足」「テクニック不足」の留意事項つきで。

 それは御指摘の通りであり、不満は全くない。今後の稽古の際に特に注意すべき点と考えている。ただ、年末の昇級審査は今回以上にメタメタな状況であったと自己分析しているが、あのときにはそのような指摘は受けなかった。それは、今思うと奇跡的だった。

 堀越さんともあとからゆっくり話をする機会があったのだが、私の場合、「熱くなりすぎて、普段の稽古で出せていることが試合で出せなくなっている」という欠点があるということだ。それは確かにそうである。

 これは反復練習を重ねることで、戦術面で試合の組み立てを考えることは当然としても、ディフェンスにしてもオフェンスにしても、一瞬における対応は半ば無意識的にできるようにしなければならないということだろう。

 また、私は休みながら4試合をしたが、最後には本当にヘロヘロになってしまった。昇段審査で連続6~8試合した先輩は凄い体力と精神力の持ち主だ。

 そして、私ももっと技術と基礎体力、そして精神力をつけないとダメだとの思いを強くもった。今回の昇級審査は試合数が多く、正直言って辛かったが、その分勉強にもなった。

 黒帯への道はまだまだ遠いとも思いますが、27年前の青帯高校生のことを考えたら、茶帯一歩手前のここまでよく来れたよなあ、という感慨もあります。

 反省点が多々ある総本部最弱緑帯の私ですが、これからも弱いなりに努力はしていきますので、皆様どうぞよろしくお願いします。押忍! 😡