平安孝行「地方からの挑戦」(前編)

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──:空道の戦績は、軽量級で今年と一昨年の2回、優勝されていますね。

平安:はい。

──:無差別は?

平安:無差別は2回戦で負けちゃいました。藤沢先輩(横浜北)でした。

──:重量級の代表選手じゃないですか。そりゃあ大きな壁でしたね。では軽量級を2回とってみてどんな感想を持ちましたか。つまり2回とったら「もういいや」と思う人もいるだろうし。なかなか次の目標が見つけにくいとこもあるかもしれない。一回だけ優勝してから次の展望が見えない選手もいます。対照的に小川選手の七連覇を目指そうっていう目標もあるかもしれないけど。

平安:いや、まだ僕、全然弱いんで。

──:それは誰に比べて?

平安:やっぱり寝技はプロシューターとかとやったらとられるし、プロボクサーとやったらパンチもうまい具合にいかないし、どこ行っても弱いんで。

──:でもまあうちだけの問題じゃなくて、総合系の人は規則限定の競技に行ったらそりゃ誰でもうまくいかないよ。ヒョードルでもオランダで修行に行ったらキックはアマチュアレベルだと酷評されたらしいから。

平安:でも自分には結構、変なところにこだわりがあるんで・・・最初始めたときに、夢みたいなんですけど10連覇くらいしたいと思ってたんで。予定通りにはいかんなあと思ってます 。

──:空道の中で一番予定外なのはどこらへんですか?2つタイトルをとればたいしたもんだとは思うんですが、何が一番大変だと思ったの?

平安:いや、もう二十歳くらいでチャンピオンになる予定だったんで(笑)。ずっとそう思ってたんですけどうまくいかなくて・・・

──:その頃は誰が一番自分にとってうまくいかない相手だったですか。

平安:いやもう地区予選から、こんなに苦労するんだーと思って ・・道場でもやられるし。自分は野球やったんですけど、そんなに苦労しなくてもいろんな学校から推薦が来たし、あまりスポーツで努力することとか知らなかったんです。格闘技をやって初めて努力しても全然うまくいかないってことがあるのを知りました。甘くないなあと思って・・

──:それは大道塾のレベルが高いっていうこと?

平安:そうですね、レベルは誰もあまり変わりはないなとは思いますけどね・・

──:でも1日2~3時間やってれば圧倒出来るはずだったんですよね。予定では。

平安:そうですね。寮生に入るまでは努力とか嫌いで、気持ちも弱くて途中であきらめたりしてたんですけど、寮生辞めてからちゃんと練習し始めました。21か22くらいからかな、岩国に帰ってからですね。ちゃんと練習し始めたのは。

──:そこで2点、聞かせて下さい。1つは、空道の最前線はいまどこらへんにあると思ってるのかということ。他の競技も経験すると、比較ができますよね。優勝者として、どこが勝負の分かれ目だったのか。もう一つは、そこに辿り着くのに、現在では東京じゃなくても自分なりに考えを持てれば地方でもなんとかなるっていうことなのか、です。
1つ目から行きましょう。今空道の最前線って、どこらへんで戦っている感じなんですか。例えばパンチ中心でやるとかね、もう一度蹴りを見直すとか、やっぱり寝技だろうとか、組技もあるぜとか、空道にはいろいろあるじゃないですか。平安選手から見て、どこらへんがポイントですか?

平安:パンチや蹴りを個別に見たら僕は空道はレベルが高いとは思わないんですけど、空道ルールに特化した技術は、やっぱすごいなと思います。

──:例えばどんな技術?

平安:例えば、高橋腕先輩とかは、肘とか頭突きとかやりながら相手が手や足を出してきたところに支え釣り込み足をかけるとか、支えつり込み足は柔道家にかけたら大したことない攻撃なんですけど、打撃ありの中で出すというのは細かいところまで気を配らないとできないんで、すごいな、かなわないな、僕にはないなっていうのがあります。

──:あれは山田流っていうことなんですかね。新潟一派の選手には全員にそういう意識が強いですよね、打撃と組みのバランス感覚というか。

平安:すごく考え抜かれた戦い方だなと思います。

──:新潟支部は、総合武道として、空道らしいオリジナルのものを作っている感があると。他に注目するのは誰ですか?

平安:小川先輩の技術もすごいなと思います。直に教えてもらわないと中々わかりづらいんですけど、小川先輩みたいに全部連動している技術っていうのはやっぱすごいです。

──:空道は総合武道だから個別の格闘技のパッチワークみたいな面があるんだけど、そういう個別の競技でいったらこれが必須だとか、これはすごいとか思ってるものっていうのはありますか。例えば飯村さんのところだったら、打撃はムエタイでいくんだと、はっきりした割り切りがあるよね。

平安:自分は全部必要だと思ってます。僕は先輩たちから「おまえにはこだわりがないのか」「打撃にこだわりがもてないのか」とか言われるんですけど、僕のこだわりは勝つことなんで。大道塾のみんなは技術について「ここについては、これは取り入れられる」とか「これは役に立つ」とかっていうんですけど、それは違うかなと。ボクシングならボクシングそのまんまを、キックならキックそのまんまの技術を自分が一応全部取り入れて、そこから使えるものを自分で出していきたい。引き出しを多くしていった方が楽だと思うし。

──:それは、いろんなことを全部やってみて、しかも個々のレベルを上げていきたいっていうこと?

平安:そうですね。ボクシングにしてもアウトボクシングするにあたって、インファイトの戦い方を知らなかったりしたら自分の知らない領域の人間とやれるわけないし。それぞれのルール内の全部のことを知っておかないと、やっぱり誠実じゃないというか、なんか逆に空道を馬鹿にしているような感じに、僕には思えます。

Posted by 佐藤@那覇道場