平安孝行「地方からの挑戦」(前編)

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──:簡単に大道塾生としてのプロフィールを自己紹介していただけますか。
平安:押忍。自分は大道塾に17歳で入りました。今年26になるんで9年くらいになります。

──:同期は藤松君なんだって? 彼はずっと一人でやっていたような印象があるけど。

平安:藤松先輩より、入塾は僕の方が早いんですけど、寮生になったのは藤松先輩の方が先なんです。寮生は途中で辞めたんですけど・・

──:へえ、そうだったんだ。寮生のままで関西に移転したのかと思っていましたよ。寮生はどこでやってたんですか?

平安:最初、東北本部に行って。

──:東北に何年かいた、と。

平安:いえ~半年で、逃げたわけではないですけど、円満というか、円満ではないかもしれないですけど(笑)みんなによくしてもらって、送別会まで開いてもらって、広島に帰りました。
高校を卒業して中四国本部で1年やって、それから東北本部行って、帰ってきて二十歳くらいから2年間くらい中四国本部でお世話になり、それからは岩国の実家で。

──:ああ、中四国本部と岩国とは別のところにあるんだ。東京から見てると位置関係がよく分からないもんで・・岩国は、「岩国同好会」っていうんですね。へえ、ご実家なの?

平安:はい。2003年の暮れくらいに僕が「もう練習できんけえ、格闘技やめんにゃいけんけえ」と親父に愚痴をこぼしたら、父ちゃんと母ちゃんは格闘技大嫌いなんですけど、建築士の叔父に頼んで百何万かけて庭に練習場を作ってくれたんですよ。

──:うわ、すごいねえ。理解のあるご両親だ。板張りなの?畳ですか?

平安:下はコンクリです。その上に畳をひいてます。

──:そこで同好会をやっている、と。同好会は今、どのくらいの規模なの?

平安:僕の練習もできないっていうのは嫌なんで、あまり人数増やさない方向で、みんなで練習して僕も含めて強くなっていこうっていう感じの方針です。同好会から総本部に収めるお金は僕も含めて2000円ずつ出して割り勘にしてるんです。

──:じゃあほんとに支部っていうより「同好会」って感じですね。選手だけが集まってるんだ。

平安:いえ、選手としてやってる人はまだ自分しかいないんですけど。みんなレベル的に高いんで、一緒に練習してるという感じです。子供とかもいます。

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──:じゃ今の練習スケジュールを教えてもらえますか。ペースや種類などを。

平安:月曜日はレスリング系のところへ出稽古してます。

──:そこはどういう先生が主宰されてるの?

平安:山口県に同好会みたいなのがあって、そこにいろんな型が集まっているんですよ。柔道の山口県チャンピオンとか、徳山大学のレスリングのコーチをしておられる柴田(寛)さんとか。柴田さんは全日本学生や全日本社会人オープンなどで優勝しておられて、RJW所属でパンクラスにも出場経験があります。そういった人たちと一緒に練習してます。

──:その集まりではレスリングだけですか?

平安:いえ、レスリングの人と総合の練習をしてます。それが月曜日。火曜日は岩国同好会の人たちと練習です。

──:岩国同好会は週に何度?

平安:週2回です。火曜と木曜。水曜日は自分の自主練で、人をうちに集めてやっています。

──:ああ、同好会の人たちと一緒に自主トレということですか。じゃあ週、何回の稽古になるんだろ?週5日?

平安:いや、休みはないです。熱とか出たところでやめる感じで。まあ僕は仕事してるんで、プロの人みたいに朝・晩とかはできないですし。

──:プロたって昼間仕事を持っている人が大半だよぉ。生活できるほどギャラをもらっている人なんて、相撲やボクシングの世界チャンピオンくらいしかいなかったよ。最近は格闘技ブームだからK-1や総合で一部はそうした人が出てきているのかもしれないけど。プロの人たちは逆に、「カラテの寮生はいいよね」って言ってるよ。食事付きで稽古できるんだから。

平安:そうですよね。

──:だから朝走るのも大変だっていうプロもいるよ。走ったら睡眠が短くなるから、その分。昼間お弁当屋さんやってるとかの人は。で、平安選手は一日に何時間くらい稽古してるんですか。

平安:平日は、昔は4~5時間とかやってたんですけど、今は年とってきて仕事もかなりきついんで2~3時間です。

──:毎日2~3時間稽古出来てるんだ。飯村(吉祥寺支部長)さんがこのところ、毎日稽古しない奴は選手として認めないと公言していておられますよね。でも現実には、全国を見渡しても毎日当たり前のように稽古している選手はなかなかいないんじゃないかな。それを自発的にやっているところが凄いね。寮生並みにちゃんとやってると。
柔術もやってるんじゃなかったっけ。

平安:柔術は土日に。土日は10時間くらいとれるんで。朝・昼・夕方・晩と分けて、柔術とボクシングをやっています。

──:ボクシングはプロのジムに通っているの?

平安:いえ、元アマのトップアマだった人に、トレーナーっていうか、お金を払って週に1回見てもらってるんです。蹴りもありとか総合みたいなのを想定して、僕に合わせてミット持ってくれたり教えてくれたりしてます。

──:それと柔術もやってると。

平安:そうですねプロシューターとかと一緒に。こちら(広島)にもパラエストラもありますけど、他のところでも。

──:そうなんだ。今伺ってると、当人に本当にやる気があるのなら、地方でもそれなりのレベルで練習出来るような環境っていうのが、格闘技界にも備わってきているみたいですね。以前は顔を殴る競技にしても、ましてや総合なんか、東京じゃなきゃ本格的には取り組めなかったものでしょ?

平安:ですねえ。でも岩国から広島に出てくるのに2時間かかるんですよぉ。

──:あ、そんなにかかるの。2時間というのは電車で?車で?

平安:車です。

──:そうなんですか。新幹線だと十数分の距離なのにね。

平安:はい、新幹線使ったら3~4千円いるんで、お金がもったいないので。

──:交通の点ではやはり地方にはハンデがありそうですね。

平安:ですね。土日の朝が特につらいですよ。広島に住んでるみんなは、8時半起きとかで余裕で稽古場に来られると思うんですけど、僕は7時半くらいに起きないと。

──:今のところ、ほとんど稽古漬けなんだね、仕事の時間以外は。

平安:そうですね 。

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──:空道の戦績は、軽量級で今年と一昨年の2回、優勝されていますね。

平安:はい。

──:無差別は?

平安:無差別は2回戦で負けちゃいました。藤沢先輩(横浜北)でした。

──:重量級の代表選手じゃないですか。そりゃあ大きな壁でしたね。では軽量級を2回とってみてどんな感想を持ちましたか。つまり2回とったら「もういいや」と思う人もいるだろうし。なかなか次の目標が見つけにくいとこもあるかもしれない。一回だけ優勝してから次の展望が見えない選手もいます。対照的に小川選手の七連覇を目指そうっていう目標もあるかもしれないけど。

平安:いや、まだ僕、全然弱いんで。

──:それは誰に比べて?

平安:やっぱり寝技はプロシューターとかとやったらとられるし、プロボクサーとやったらパンチもうまい具合にいかないし、どこ行っても弱いんで。

──:でもまあうちだけの問題じゃなくて、総合系の人は規則限定の競技に行ったらそりゃ誰でもうまくいかないよ。ヒョードルでもオランダで修行に行ったらキックはアマチュアレベルだと酷評されたらしいから。

平安:でも自分には結構、変なところにこだわりがあるんで・・・最初始めたときに、夢みたいなんですけど10連覇くらいしたいと思ってたんで。予定通りにはいかんなあと思ってます 。

──:空道の中で一番予定外なのはどこらへんですか?2つタイトルをとればたいしたもんだとは思うんですが、何が一番大変だと思ったの?

平安:いや、もう二十歳くらいでチャンピオンになる予定だったんで(笑)。ずっとそう思ってたんですけどうまくいかなくて・・・

──:その頃は誰が一番自分にとってうまくいかない相手だったですか。

平安:いやもう地区予選から、こんなに苦労するんだーと思って ・・道場でもやられるし。自分は野球やったんですけど、そんなに苦労しなくてもいろんな学校から推薦が来たし、あまりスポーツで努力することとか知らなかったんです。格闘技をやって初めて努力しても全然うまくいかないってことがあるのを知りました。甘くないなあと思って・・

──:それは大道塾のレベルが高いっていうこと?

平安:そうですね、レベルは誰もあまり変わりはないなとは思いますけどね・・

──:でも1日2~3時間やってれば圧倒出来るはずだったんですよね。予定では。

平安:そうですね。寮生に入るまでは努力とか嫌いで、気持ちも弱くて途中であきらめたりしてたんですけど、寮生辞めてからちゃんと練習し始めました。21か22くらいからかな、岩国に帰ってからですね。ちゃんと練習し始めたのは。

──:そこで2点、聞かせて下さい。1つは、空道の最前線はいまどこらへんにあると思ってるのかということ。他の競技も経験すると、比較ができますよね。優勝者として、どこが勝負の分かれ目だったのか。もう一つは、そこに辿り着くのに、現在では東京じゃなくても自分なりに考えを持てれば地方でもなんとかなるっていうことなのか、です。
1つ目から行きましょう。今空道の最前線って、どこらへんで戦っている感じなんですか。例えばパンチ中心でやるとかね、もう一度蹴りを見直すとか、やっぱり寝技だろうとか、組技もあるぜとか、空道にはいろいろあるじゃないですか。平安選手から見て、どこらへんがポイントですか?

平安:パンチや蹴りを個別に見たら僕は空道はレベルが高いとは思わないんですけど、空道ルールに特化した技術は、やっぱすごいなと思います。

──:例えばどんな技術?

平安:例えば、高橋腕先輩とかは、肘とか頭突きとかやりながら相手が手や足を出してきたところに支え釣り込み足をかけるとか、支えつり込み足は柔道家にかけたら大したことない攻撃なんですけど、打撃ありの中で出すというのは細かいところまで気を配らないとできないんで、すごいな、かなわないな、僕にはないなっていうのがあります。

──:あれは山田流っていうことなんですかね。新潟一派の選手には全員にそういう意識が強いですよね、打撃と組みのバランス感覚というか。

平安:すごく考え抜かれた戦い方だなと思います。

──:新潟支部は、総合武道として、空道らしいオリジナルのものを作っている感があると。他に注目するのは誰ですか?

平安:小川先輩の技術もすごいなと思います。直に教えてもらわないと中々わかりづらいんですけど、小川先輩みたいに全部連動している技術っていうのはやっぱすごいです。

──:空道は総合武道だから個別の格闘技のパッチワークみたいな面があるんだけど、そういう個別の競技でいったらこれが必須だとか、これはすごいとか思ってるものっていうのはありますか。例えば飯村さんのところだったら、打撃はムエタイでいくんだと、はっきりした割り切りがあるよね。

平安:自分は全部必要だと思ってます。僕は先輩たちから「おまえにはこだわりがないのか」「打撃にこだわりがもてないのか」とか言われるんですけど、僕のこだわりは勝つことなんで。大道塾のみんなは技術について「ここについては、これは取り入れられる」とか「これは役に立つ」とかっていうんですけど、それは違うかなと。ボクシングならボクシングそのまんまを、キックならキックそのまんまの技術を自分が一応全部取り入れて、そこから使えるものを自分で出していきたい。引き出しを多くしていった方が楽だと思うし。

──:それは、いろんなことを全部やってみて、しかも個々のレベルを上げていきたいっていうこと?

平安:そうですね。ボクシングにしてもアウトボクシングするにあたって、インファイトの戦い方を知らなかったりしたら自分の知らない領域の人間とやれるわけないし。それぞれのルール内の全部のことを知っておかないと、やっぱり誠実じゃないというか、なんか逆に空道を馬鹿にしているような感じに、僕には思えます

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──:空道は総合武道だから、どのように取り組むかでその人のセンスが出ますよね。
大道塾の代表選手である藤松選手の戦い方っていうのは、こいつは打撃が強いなと思ったのは組みにいくし、組みが強いなと思ったら面倒な組みをやらずに打撃に行っちゃうじゃないですか。相手の弱いところをつくっていうのが藤松君のやり方としてありますよね。まあ、相手がロシア人とか一発を持っている場合のことだけれども。打撃も組みも大したレベルでなければ相手につきあうこともありはするんでしょうが。どちらかっていうと相手を見て、見た感じで判断してどんどん相手の弱い方へ追い込んでいくようなことをやるじゃないですか。
一方、飯村さんだったら徹底的に打撃で勝負。ただ、飯村さんがやっているのは空道じゃなくてムエタイだっていう人もいるかもしれないけど、僕は違うと思うんだよね。例えば寝技をやらないかって言ったら、寝技の防御だけはやるんだよね。攻めをやらないだけで。攻めをやらないのも一種の寝技じゃないですか。あまり寝技の修得に時間をかけるのがもったいないから、打撃をやりたいという立場は空道の中でもありえますよね。

平安:飯村先生は、柔術の道場にも、多分行っておられたと思うんです。

──:そうですよ、きっと。目撃情報があるし。あの先生は決してやってないわけじゃなくって、一通りやってて、そのうち打撃だけを伸ばすってことを主張しているんですよ。あの方が寝技をやってないっていうのは大間違いであって。

平安:それも知ってるから防げるんであって、打撃だけやって寝技を全く学ばないというのはおかしいと思います

──:じゃあ、平安選手が飯村さんの戦略と違うのは、もっと積極的に寝技をやりたいということですか。それぞれの競技を、あるレベルまで極めたいと。

平安:そうですね。僕の場合、一応全部やりたいんです。

──:なるほどね。じゃあ、2つめの質問に移ると、そこまで様々な競技で一線の技術を学ぶっていうのは、一昔前なら東京だけでしか言えないことだったじゃないですか。特に90年代前半はそもそも顔たたくだけでも空手系ではウチしかなかったから、そうじゃなければキックに行くしかなかったし、なかなかアマでやるには厳しかった。だから大道塾に優位があったんだけど、今、大道塾以外のアマ格闘技の教室も東京には雨後の竹の子みたいにできています。さっきの話を聞くと、地方にも相当なスピードで広がっているわけですね。それでも地方で不利なところはあるんでしょうか。

平安:そうですね、都会だったら、色んないい選手が集まってるっていうか、そんなに遠くまで足を運ばなくてもできるっていうのが羨ましいですね。

──:まあ吉祥寺は、青木真也と大月晴明が来てるっていう、信じられない(笑)、梁山泊みたいな状態ではありますし、加藤さんのところにも山下志功さんが習いに来ておられて。世界チャンピオンだらけですね。そういうコンパクトな状態ではないということですか。

平安:そうですね。やっぱり、こっちのプロシューターの人たちも、「新しい技が開発されたら技の伝達っていうかこっちまで流れてくるのになかなか時間がかかる、時代遅れって言われるって」言ってます。都会はやっぱ優れてるけえ、俺らは遅れてるな、と。
今日も、プロシューターの冨樫健一郎(パレストラ広島)さんが「やっぱり自分らは時代遅れだ」って言ってました。

──: だけど、時代遅れっていうのは、昔は10年くらいの遅れを指したから。今はビデオやDVDを見たらもうほとんど瞬時に伝わるでしょ?そういう意味では落差はなくなっているんじゃない?昔に比べると。

平安:それはそうですけど。それでもやっぱり東京は選手の数が多いので、田舎だと、岩国で選手でまじめにやっていこうっていう人間は僕以外いないし。

──:じゃあ、どうしてそれで気持ちを持続できるの?「不利だからやっていけない」って言い訳モードに入ってもおかしくないのに、逆に今は空道を引っ張って行ってる感じだよね。

平安:僕は自分の実力には全く自信がないですけど、才能には自信があるけえ。

──:へぇ~っ、おもしろいね、その言い方は。

平安:ものすごい自信があるんですよ、他の選手とかに才能だけは負けないっていう。僕は野球やってきて、50メートル走とかでも5秒8とかだったし、ほんとに運動神経は他の人間とは全然違うっていう自信があるんですけど、実力には自信がないんです・・

──:それはぁ(笑)それぞれの競技を週に1回しかやってないからだよ。週に5回やってる奴には勝てないよ。平安君に負けたら、その道でがんばってる選手は浮かばれないじゃない。それだけだよ。

平安:それでも、柔術とかボクシングの人に負けたくないんです。

──:だから、出稽古は難しいところがあるよね。僕も柔道やキックで出稽古するけど、それぞれの競技のルールでやったらどうしてもやられちゃうもの。自信をなくさないことが重要だよね。それじゃあ、見方を変えて。ボクシングは、日本はあまり強くないよね。アジアを突破してなかなかオリンピック出られないくらい、層が厚い。どんな感じ?こっちのボクシングの選手たちは。

平安:今までいろいろ、田舎のジムとか渡り歩いて、いろんな人にちょろっと教えてもらったりしたんですけど、どのジムでも、きっちり基本から全部直されるんですよ。でも今教えていただいている人は、僕のいいところを引き出して、悪いところをちょっと修正してくれます。僕を尊重してくれて、僕の形に変えていってくれてるんで、信頼できますね。

──:プロのトレーナーの方ですね。広島っていえば、中広選手だったっけ?広島から全勝で全日本タイトルに挑戦したけれど、負けて、でもその試合が評価されて世界戦をタイでやってきた人。そこのジムとは別なんですか?

平安:そことは別で。普段はボクササイズとかやってるジムです。

──:じゃあ広島にもいろいろなジムがあるんですね。たまたまNHKでドキュメンタリー番組を見たんですよ。中広選手の。日本タイトルに挑戦するだけでもすごいと思うし、広島でもああやってやれるんだなと思って。すごく小さいよね、あそこのジム。テレビに映っても小さいくらいだから。器具全部自分の手で作ってるし。それを見て、僕は平安選手がどうやって中央の選手を超えようとしているのか、気になったんだよ。それにしても、ボクシングは技術がある程度まで完成されてるけど、総合武道はまったく未完成でしょ。中央が情報的には有利には決まってるよね。

平安:地方でもできるんだなってのはあるんですよ。やっぱり都会と比べると全く違
うかなとは思うんですけど・・やっぱり、僕みたいなキチガイじゃないとなかなか無理かなと思います。

──:どの点でキチガイなの?

平安:さっき言った通り、自分の才能に自信があるとか、他のことを全部犠牲にできるっていう部分で・・

──:じゃあ今、空道でキチガイは他に何人かいますか?

平安:いっぱいいますけど(笑)藤松先輩もそうですし、寺本先輩もある意味、キチガイですよね。加藤先輩とか、言い意味で。小川先輩とかもなんですけど。

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──:もともとね、平安選手が噂になったのは、平安君のブログが面白いって、ある稽古生から聞いたからなんですよ。「こういう素直なことを書く人は珍しい」と。
春の大会ではきつくて「スーパーセーフの中でゲロ吐いた」とか。ライバルである末廣智明に対する評価も素直で、現役選手なら普通もうちょっと強がって書くはずだろうとか。

平安:いや、飯村先輩もすごいですけど、末廣君もすごいなと。肩が抜けたりいろいろあるとは思うんですけど、まっすぐ伸ばしてもらってて羨ましいなあと思います。

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──:だけど、どうかな。この間、僕らビジネスマンクラスでパーティがあったんで、みんなで昔のビデオを見てたんだけどね。その中で15年くらい前の飯村さんの昇段試験のビデオが流れてね。今支部長さんしているような強豪が次々に出てきて、顎にパンチをもらっててひっくりかえって、長田(賢一仙台西支部長)さんがひっくり返ったのをダウンカウントも取らずに無理やり立ち上げて、「はい!はじめ!」とか言って。
あの華麗な飯村さんがヨレヨレで、最後には見てる人みんなが盛り上がっちゃって、拍手して画面に向かって応援してね。世界大会に出た新宿の佐野教明君とかも、「ああいうめちゃくちゃを経験してきた選手の方が、空道をやっててどっか芯があるっていうか、いざっていう時、試合の一番きつい時に生きるんじゃないか」って感動してた。末廣君は勝つときは最高に華麗なんだけど、試合の一番凌ぎあいになるとどこか怪我したりしてるでしょ。極真の百人組み手にしても、滅茶苦茶なんだけど、それを凌いだ人だけがチャンピオンになれるじゃないですか。まっすぐに伸びるだけだともうひとつ超えられない壁ができちゃうような気がするんだけどね。
まあ、それは王者になるような限られた人だけにとっての壁なんだけどね。

平安:僕も、こんなはずじゃないっていうのはありますよね。常に。まっすぐ伸びたかったけど、回り道してきて、こんなはずじゃないって思ってるから続けられるっていうか。まっすぐ伸びてて、ちょっと挫折したら、環境が悪いからとか言って辞めとるかなと考えたりもします。

──:ほほど同期の藤松選手についてはどう思いますか。本部にずっといられて羨ましい、とは思わない?
でも彼は、特段の出稽古もしないよ。東京にいる利点を生かしたりしていない。放棄しているっていうかね。一度、僕が誘って、学芸大の柔道部に出稽古したことがあるんだけど、インターハイで優勝してる連中相手に、彼はほとんど投げられないんだよね。1時間ずっとやって息も切れないし。相手に聞いたら「力が異常に強かった」と言ってたんだけど。それっきりで二度と行こうともしなかったし。1人でずっと四股ふんだりしてる。

平安:みたいですね。若月先輩からたまに、聞きます。

──:ほんとに四股踏んで刀振ってるだけだもの。あれだと、地方でも一人でも鍛錬できるよね。自分だけにしか頼らないというか。

平安:合宿とかで東京に何回か行った時に、藤松先輩にいろいろ聞いてから自分なりに分かろうとして地元に帰ってからもやってみたんですけど、僕には分からなかったです。

──:何を言ってるかが分からないということ?

平安:分かるんですけど、スパーとか練習とかで試してみたりして、うまく出来ないで放り投げちゃいました。「ダメだ、俺には向かねえ」と。

──:その時は何を言ってたの?藤松君は。

平安:投げられる時に脱力して、こっちに投げられたらこっちに体を預ければいいとか・・お腹のところに手を構えて、そっから打てば予備動作が見えないんだとか、いろいろ教えてもらったんですけど。たまにスパーの途中で相手の意識を変えるためにやったりはするんですけど、ちょっと僕の中で疑問が生まれたんで…

──:いやあ、僕も合気道系の話をいろいろな方から聞くことはあるんだけど。消化できたかどうかは分からないけど、勝手に想像してはいるんですよ。いくつかあるんだけど、今の一つめの話は、柔道にもあるやつじゃないのかなあ。相手の体重を受けた瞬間に膝の力を抜く、いわゆる「抜重」。柔道でも、相手の払い腰や内股に対して、受ける側がやるんです。で、こないだ僕の自分のクラスでもやったんだけど、投げが得意じゃない人は逆に抜重してから投げられてしまおう、と。で、投げられた瞬間に上になっちゃえばいいわけじゃない。相手が首投げに来た瞬間に膝の力を抜いてしまうと、座っちゃって膝に相手を乗せるようになる。そのまま投げられると、回転して上になるんだよね。あれ、だから柔道だと1本取られて負けちゃうから出来ない。でも空道では相手が立っていられないから効果もつかなしい、気にする必要がない。で、一緒に転んで上になるわけ。
昔、小川選手が、面白がってなのかな、数回試合中にやってました。最初はわざと投げられてるんだよね。投げられる瞬間に脱力して、ころがって上になって、キメを入れてる。藤松君もそれを言ってるんじゃないのかなあ。

平安:そんな感じかもしれないですね。ただ、自分は捨てたわけじゃなくて、今はやらない、頭には残しておくって感じにしてますけど。

(後編に続く)

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