清水和磨「ラスト・サムライ in 空道」

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ゲスト:清水和磨選手(総本部)
聞き手:松原隆一郎(総本部)
テープ起こし:一号・西村(もうすぐ志田)知子(吉祥寺)
2007年1月の日曜 西新宿にて

2006北斗旗無差別 決勝 清水-藤松

2006北斗旗無差別 決勝 清水-藤松 本戦

2006北斗旗無差別 決勝 清水-藤松 延長

大道塾の過去と現在をつなぐ

–:今日は2006年の北斗旗無差別で準優勝された清水和磨選手にお話を伺いたいと思います。
清水選手は長野県出身で現在33歳、総本部所属です。身長は179cm,体重は86kgですか。空道歴は11年、ただいま二段ですね。戦績は04年の北斗旗超重量級で優勝。無差別は02 03 06準優勝、05年の第二回世界大会では重量級3位になっておられます。

近年、空道は急速に国際化が進んでいますね。ロシアは塾生が何万人もいるらしいし、選手でも相当の数がいる。前回のチャンピオンですら出れるかわからない、日本でなら楽勝で出場できるコノネンコが予選の一回戦で敗退するというとんでもないレベルです。そして日本の大道塾でも、この前の無差別ではかなりメンバーが変わってきたなという感じを受けました。

ただ、正直言って、外国のレベルと比較して、さらに国内でも最近は総合格闘技をやっている選手は増えていのるで、プロの団体のレベルと比較すると、北斗旗の上位5人くらいは互角かと思うんですが、その下の人たちとはかなり見劣りするな、という印象を受けました。

かつての大道塾っていうと、空道(当時は格闘空手)で世界を引っ張っていたし、総合格闘技でも日本国内は修斗などと先方のルールで互角に闘っていました。でも近年は、入門してくる選手も、総合やキックとかの各ジムに流れて行ってるんじゃないかな。そういった各流派は、プロだけじゃなくて、アマにも力を入れていますからね。アマの総合や武道やというだけでは、魅力を伝えにくい難しい時代になっています。

そう考えますと、清水選手は大道塾の本流、つまり寮生あがりで、組み手もかつての大道塾のものをやっていますね。そういった選手は本当に減っています。藤松選手はもちろん寮生だけど、組み手の型が違うし。昔の組み手っていうのは、要するに極真から来た流れがあって、長田さん、山田さん、市原さんとかを経て稲垣さんが完成させたのがじゃないかと思うんですけど。がんがん殴り合ってですね、力で押し倒すみたいな。でも藤松はそうじゃない。上位5人のほかの選手も、まあ華麗なんだけど、迫力は昔とは違いますね。

そうしてみると、この間の大会での清水選手は、かつての大道塾のスタイルも持っていながら国際的な大会にも通用するような、最後の1人ではないかと思えました。そういう意味では、過去のことも知ってるし現在のことも知ってる、歴史と世界と他流に現役では一番よく通じているんじゃないかと思うんですよ。この前の大会の決勝では藤松君にやられちゃったけれども、会場からは「清水コール」が沸き起こっていたでしょ?ああいう雰囲気は、第一回の世界大会決勝の稲垣さん以来じゃないか。昔のスタイルには、観客は感銘を受けるんですよね。それて、いろんな話を伺えると思ったわけです。

2006無差別を振り返って。平塚選手は・・

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前置きがちょっと長くなっちゃいましたが、そういうわけで、この前の大会から伺いたいんですが。繰り返すと、僕の印象のまず1つめは、上位の5人、笹沢、清水、藤松、稲田(卓也)と平塚、この5人は抜けてるということです。別の言い方をすれば、ベスト8は一発があるんだけど、さらに5人は「穴がない」っていうことなんだけど、それについてはどう思いますか。実際に闘っている選手としてはどういうふうに感じているんですか?

清水:そんなに強いんですかねえ、わかんないですけど。自分は今回平塚と勝(早稲田)と初めて当たって、あんな感じで後輩と直接激突するっていうのは初めてですから。その辺はよかったんですけど。勝は初めてなんで、しょうがないでしょうねえ。一段一段勝ち上がっていって、ああよかったっていう感じだけだったと思うんで。でも、平塚はどうしたのかな…って。まだ本人に聞いてはいないんですけど、あの日はなんか…

–:様子が変だったね。僕はちょっと立ち話したんだけど、その時は冷静だったのに。

清水:そうですね。なんかあんまり倒そうとしてこないんですよ。慎重になってたのもあると思いますけど、やっててすごく楽で、全く負ける気がしなかったです。で、なんでだろなと思って。うーん、まあ、彼がいろいろと考えてるのはわかったんですけど、最後かもしれないわけじゃないですか。直接、自分と当たるのって。大道塾って歴史的にそうなんですけど、直接先輩を叩いて世代交代するチャンスは中々ないんですよ。

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平塚洋二郎選手

–:市原・長田戦だって、結局市原さんが黄帯で北斗旗に出た時に1回あるだけでしたからね。

清水:そうなんですよ。だからなんて言うんですかねえ、もう自分とかを倒せば、「清水を倒した」っていう結果が残るわけじゃないですか。なんで、なんか理由があるにしても、「この野郎」ってこっちが思うくらいやってきてほしかったですね。

–:それでも平塚君は、その「下」の選手たちよりは断然格上だったでしょ?

清水:ああ、それは全然、上です。ただそれは上って言っても、今の北斗旗は昔だったら絶対出られない選手も出てきてるわけですよ。自分は無差別に初めて出た時は嬉しくてですね。昔は、無差別予選で3回勝たなきゃ出られることが確定しなくて。

–:黒木(マグナム・トーキョーの)にしても、寮生なのに結局は全国大会には出られなかったよね。それくらいの難関だった。

清水:3回ですよ。無差別予選3回勝つって中々難しいですよ。あの頃は関東予選で60人以上出てた事もありましたから。

–:今回、予選で一勝もしてない選手が3人いましたよね。

清水:でもそれも、選手に罪はないんですよね。出場枠を満たすために出てもらわなきゃ大会が成立しないし、ただやっぱり、試合を見に来た人に「何だこれ」って思われるのは自分は絶対いやなんで。自分はその気持ちだけはあるんですよ。他の選手の人たちにはあんのかな、わかんないですけど、多分あんまりないと思うんです、そんなに強くは。

–:まあみんな、ほんとに目の前の試合だけで精一杯という感じだった。で、新人が多数出てきてくれたのは結構なことなんだけれども。平塚にしても、それから笹沢もこの2、3年で出てきた選手だから、大学の四年生だけどまだ新人から中堅あたりですよね。笹沢君は予選で他流に負けたけどそんなに悔しがってる風でもないし、昔はそういう意味では先輩とあたったらがーーっと行くとかさ、他流派に負けるなんてとんでもないことだったでしょ。加藤(清尚)さんなんか、ライアン・シムソンとやって、勝てなかったけど当時打撃では日本最強と言われたシュート・ボクシングの吉鷹選手に「ハートが強い」って絶賛されましたよね。だからああいった淡泊さは信じられないことですよ、昔で言ったら。みんな死に物狂いで食らいついていった。そういうのが上位5人の中に入っている平塚や笹沢にも薄い気がするんだけど、これはどういうことなんだろう?

清水:いや、ありはするんですけど、もっともっと欲しいですよね。トップな訳じゃないですか。藤松は別格としても、平塚は超級でチャンピオンなんですから、大道塾のトップな訳ですよ。笹沢も軽重ではそういう立場の選手だし・・・それを言うとなんて言うんですかね…、いろいろなものを押しつけちゃう形になるから大変だとは思うんですけど。

–:ちなみに僕は平塚君については、ガオラでゲスト解説させていただいたときに朝岡さんから面白い話を聞いたんですよ。朝岡さんによると、平塚選手はこの間ロシアに塾長と行ってケリモフ・シャンハルと試合をして負けて以来、すごく考えこんでるんだと。対ロシアということで、組み手を変えようとしていて模索中なんじゃないかって言うんだけど。ただね、タックルを何度もしたでしょ?あれは意味がわからないよね。レスラーほどタックル強いとか早いわけじゃないし、タックルに成功したって空道の寝技は30秒しかないので、倒れるとちょうどガードポジションになっちゃう。それからパスガードするのに時間がかかると、マウントにもニー・オン・ザ・ベリーにも行けずに終わってしまう。何をやろうとしたんですかね。

清水:そう、それでその辺を話してないんですよね。なんかおかしかったとは思ったんですけど、試合の話はしてないんですよ。だからなんでああなったのかっていうのは・・・聞いとけばよかったなという気はしてるんですけどね。でもロシア遠征レポートにも書きましたけど、藤松でない限り、平塚が勝てない以上、他の誰がケリモフとやっても結果は同じだったと・・・あっ、長野先輩なら勝ってたでしょう。

–:平塚君、ある時期に、柔道的な組み方がうまくなった時期があったでしょ。沖縄にいたときに琉球大学の柔道部で稽古したんじゃないか、って話を聞いたんだけど。小外掛けとか、結構うまかったですよ。今回はどうして出さなかったのかな?外人には通用する技じゃないので、入れ替えてるってことかもしれませんが。

清水:でも、大道塾で組み技がうまいっていっても、それが外でも果たしてうまいっていえるかというと・・・・てのはあるんですよ。強いかどうか、わからないですね。 30秒なわけですよ、30秒なのに1本勝ちがこんな多すぎるのは結局…

–:ガードが弱い?

清水:いや、それ以前に、実力が全然違うんですよね。30秒でぽんぽん1本が出るっていうのは。もちろん、あれですよ、立ち技から流れを作っていって、ぱっとそのポジションを取れれば30秒以内ってのも充分ありうるんですけど・・

–:そこまで考えててできる選手は何人もいないからねえ。

清水:なんかふっと入ってあっという間にとか、すごく多いんで。

–:僕が最近出稽古している東大柔道部っていうのは七帝柔道だから、昔の高専柔道ルールで稽古しています。15分間延々とやって、東海や国士とでも引き分ける役の選手を養成してるわけね。それから言ったら確かに30秒なんかで取られるってのはありえないですね。寝技だけに専念して稽古させれば、全日本クラスの選手と対戦しても、先方があまり寝技は得意でないならば5分くらいならなんとか持ちこたえる選手を作れるんですよ。だから言われてみると、30秒で取られるってのは、まあありえない。
平塚君は何を考えてたんだろう。その日によっても調子の善し悪しあるじゃないですか。それとも違う?

清水:とにかく、あれですね、何も感じなかったというか。あの日は全体的に感じなかったですね。稲垣先輩がよく言うんですよ、「みんなうまい」って。でも、怖くないんですよ。おっかない人がすごく少なくなった。ほんとにギリギリの戦いをするような、そういうんじゃなくなったんですよ。 空道という競技として良い試合は多くなってきたんですけど。

–:市原・稲垣路線ていうのは、とにかくそれでしたね。怖い人たちだった。

清水:忙しくてたまにしかいらっしゃらないですけど、来た時とかは違う稽古になっちゃいますからね。それなのに、稲垣先輩が来られない月曜日でも、最近は選手なのに来ない人が多いんです。
昔は、総本部は強かったわけじゃないですか。そんなのありえないっていうか、常識外れなことをやってて、それで強かったっていうのがあったんで。時代が違うし今後は違うことをやってかなきゃいけないんでしょうけど、どうしたものかなっていうところです。ただ本部所属の一般選手なのに月曜日クラス出ないで試合する人達にもっと出て来てほしいです。うちらとやってれば予選の選手はそれより楽なわけじゃないですか、本当に北斗旗目指すならなんで出ないのかな?と思います。兵頭さんなんて42歳ですよ。そんな人が頑張ってるんだから一般で出る若い連中なんてもっと出来るはずです。一緒に稽古してなくても総本部の選手には簡単に負けてほしくないし、変にチームみたいに小さく固まってないでもっと色々お互いが学び合うみたいになったらいいなと思います。

–:じゃあ、大会では藤松とあたる所までは、そんなに怖いというか、ギリギリの試合はしなかったっていうことですか?

清水:そうですね。自分はそんなに「技が多彩で」とかいう感じではないじゃないですか。やっぱり気持ちだと思うんですよ。今は気持ちの折れないやつがあんまりいない…ちょっと競ってくると諦めてしまうんで。追い込んでいっても諦めないやつっていうのが一番やっかいですよ。

–:そういえば対平塚戦だったかな、清水君は相手のパンチをわざわざ待って、右フックをかぶせて打ち返してたじゃない?稲垣さんが得意にしているパンチだけど・・・

清水:単純にあれは避けられなかっただけ…

–:いや、避けられなかったっていっても、仰け反った訳じゃなく、カウンターを打つかのように返していたじゃない。あれも気持ちだよね。ああやられると、打った側は「この相手は気持ちが折れない」って印象づけられるじゃないですか。最初から気持ちで負けないって決めてるからああいう感じになるわけでしょ。

決勝で沸き起こった「清水コール」

清水:距離をとって闘うっていうのは、自分は無理なんで。もっとうまい人はいっぱいいるんで、向こうが考える時間を与えないようにするのが自分のスタイルなんです。あと今回も、大勢知り合いが応援に来てくれてて。自分がチケット売るのは、関東は3割だけなんですよ。全部で80枚買ってもらえたんですけど。

–:どんな割合で売れたんですか?

清水:関東は30%くらい、あとは長野とか新潟とか群馬とかいろいろです。

–:でもディファで80だったら、かなりのもんだよ。代々木第二だったら3000も入るから目立たないけど。

清水:それで、交通費が1万、2万、3万かかってるやつもいる。それでも来てくれるんですよ。やっぱりそれがすごくありがたいなっていうか。中にはほとんど会ってないのもいるし、年に1回会うか会わないかっていう人もいるんですけど。
自分、6年以上同じ所に住んだことがないんですよ。仕事もやっぱ、これ(空道競技)を続けるめに転々としてて、それなのに世界大会とかにちゃんと来てくれた人っていうのは、ほんとに繋がってる人間だと思うんですよ。たまの休み、週1のやつならば1日つぶれるわけですよね。それなのに来てくれて、「来なきゃよかった」って思われたら絶対嫌ですから・・・この前はそれが特に強かったですね。

–:稲垣さんは1回戦から観客席で清水選手に大声で声援していて、で、何言ってるかと思ったら「殺せ~殺せ~」って。非常にわかりやすい。会場まで来たら、いまさら技術じゃないだろう、ってことなんでしょうけど。あれも言いたいことはよくわかる。その気迫で行けってことなんだけど。清水君もそれに応えて、前にがんがん出ていましたね。対照的に、藤松選手はそういう気持ちを消しちゃうところがあるでしょ?それはそれで、彼ならではの武道なんだけど。そのせいか、決勝は清水コールが一斉にわき起こった。
だけど今回あんまり気持ちが前に出てるんで、ひょっとして引退するつもりじゃないかとまで思った位ですよ。それはお客さんを呼んだからだったんですね。

清水:呼んだからっていうか…自分は最近、気持ちを同じ状態に維持しにくくなってて。とくにスパーリングはやりたくない時は休みたいっていうか…。職員て毎日がそういう生活じゃないですか。この日はこれをやんなきゃいけないって決まってるんですよ。それがずっと続いたんで、自分は凡人ですからやりたくない日は休みたいんです。甘いって言われるかもしれないんですけど、逆にのってる時にがーっとやりたいんですよ。なかなかそういう風にはいかないんで、結構気持ちをコントロールできないところがありますね。

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