第23話:痛いのはもういやだ!(2007年3月、5級獲得)

門間理良の黒帯への階段

 家族にブーブー文句を言われた2006年クリスマスイブの昇級審査だったが、私は黄帯をいただくことができた。クリスマスプレゼントあるいはお年玉のようなものである。

 総本部ビジネスマンクラスの場合、黄帯を締めるようになると、松原先輩に許可をいただいた上で、顔面ルールでの防御や攻撃の基本の稽古(松並先輩が指導してくださる)およびスパーリングに参加できることになっている。青帯以下の人たちは、スパーリングがはじまるまで2階で基本ルールでの稽古を行う。

黄帯はそのどちらに参加しても構わないのだが、私は基本ルールを選択した。どうせ、次の審査はまだ基本ルールなのだから、せめて5級を取るまでは基本ルールでいこうと考えたのだ。

 審査は2007年3月で、総本部3階で行われた。いつものとおり、基本稽古、移動稽古でたっぷり汗をかいた後、組み手審査である。対戦相手は新宿支部の方でかなり大柄な人である。

 礼儀正しい愛想の良い方だったが、組み手が始まるとその印象はどこへやら、非常に獰猛な組み手をされるのである。だが、感心ばかりしていられない。こっちも負けずに殴る蹴るだ。

 ビジネスマンクラスの場合、打ち合いがそれなりに続くと途中で分けられる。一度わけられると、元のラインに戻ってから構えて「続行」の掛け声で始まることになっているのだが、この方は「続行」の声がかかる前に、審判の先輩を押しのけるようにしてこちらに殴りかかってくるではないか。かなりの興奮状態だ。

 私は、武道における礼というものを失しているのではないかとちょっとカチンときたので、構えをやめて手を下ろした。審判をしてくださった先輩もそのへんを察してくれて、すぐに相手の方を制してくれたので、きちんとした形で組み手を再開できた。

 結局、最後にはお互い足を止めた形での殴りあいという様相を呈してまま、終わった。

 後ろに下がると先輩の1人からは「ずいぶん痛そうな組み手をしてましたねえ~」と笑われてしまった。組み手を組み立てられない(主導できない)という点を指摘されたのだろうと理解した。こっちも苦笑するしかない。

 また、別の先輩にも、「途中で手を降ろしちゃって、怒ってたでしょ」とニヤッとされた。これも笑いかえすだけで十分だった。

 とはいえ、試合が終われば相手をしてくださった方とも、笑顔で挨拶して健闘を称えあった。これで気分はすっきりである。2人とも道衣を脱いでみるとあちこち痣だらけである。

 だが、このとき、つくづく「ああ、もう基本ルールはいやだなあ。痛いのは御免だな」という気持ちが強くなってしまった。次回で詳述するがこれが、後に緑帯獲得に失敗したときの精神的ダメージをより強くすることになったのである。

 それから、数日後。道場に来てみると張り紙があって、5級に昇級したことを知った。

 ついに当初の「目標」の5級に到達である。この日を境に、私はビジネスマンクラスで顔面ルールに参加するようになった。

 新しい目標は6月の昇級審査での緑帯獲得に定まったのだが、思いのほか苦闘の時期が続くことになるなど、このときは知る由もなかった…。

【筆者後記】
  なかなか書く気がでなくて、期間が空いてしまいました。でも、タイトルが「審査への階段」である以上、どういう結果が出ても書くしかありません。
次回は2007年6月の「緑帯獲得挫折編」をお送りします。乞ご期待!

本日、参ります 😡