藤松泰通「試合」を語る

藤松:ほんとにいつの間にかって感じですね。

--それは身を削って、スパーリングやってたってことか。

藤松:そうですね。もう、試合の方が楽ですもんね。

--ど突き合いをやるだけやって…だから、山崎・稲垣とど突き合いの稽古のやりすぎで頭を怪我したんじゃないかって思うんだけど。あれー試合で怪我したんじゃないだろう?疲労骨折じゃない?

藤松:それは自分も思いますよ。疲労骨折ですよ。疲労骨折(笑)。

--じゃ、なるべくして今の組手になったと。

藤松:でも、逆に例えばもう1年後に、怪我してたら世界大会出れないじゃないですか?だから、あのタイミングはベストですよ。

--時期的にも3年間あったしね。

藤松:タイミング的にはベストですよ。なるべくしてなるんですよ。

松原:ロシア人はビックリだよね。藤松は三年で全然違う人になっちゃって…。
ちょっと言いにくいんだけど、一部には藤松の組手は基本的に寝技狙いじゃないかって、打撃好きな人からは、そういう話もあるんだけど、ただ…頭殴り合う…一発もらわないっていうこと前提に話してると思うんだけど、そういう事に対しては、率直にどう思いますか?今の自分の組手の中で打撃はどういうものだと思ってます?

藤松:道場来て自分でスパーリングしてもらえれば、わかることなんですけどね…見ただけじゃわからないです。自分もそういうのがわからないっていう人がいるのはわかるんですよ。だから、そう言われるのはわかるんですよ。だけど、大道塾に来てスパーリングしてもらえれば絶対そうなりますよ。
でも、そんな事言ってもしょうがないですけどね。それは自分が試合で見せないといけないんですよ。でも、なかなか打撃で打ち合うっていうと自分、絶対頭の事がありますからね、ここでやったら大道塾に迷惑がかかるじゃないですか?自分が死んだら。それもあるから、なかなか難しいんですよね。だから、こう…あんまり危険な事ができないですよね。

--では、いままでは北斗旗無差別を2回取れば、だいたい歴代の名チャンプということになっていました。岩崎さん、西さん、長田さんに市原さん。セム・シュルトに稲垣さん。錚々たる北斗旗王者です。ところが藤松選手は、無差別だけでなく世界も2回取ってしまったと。で選手生活としては、今後、引くにも若すぎるんで。若くてそうなった人って大道塾には、いないんだけど…長田さんは北斗旗を二度取った後は試合に飽きたような・・やることなくなっちゃったのかな?15年くらい暇にしておられた(現在は地域社会に根ざす武道教育に情熱を燃やす)んですけど、藤松選手はこれで、退屈したり、どうしようかな?って事にはならないですか?

藤松:いや、しないですね。

--それは、どういう心境?選手生活続けて…

藤松:優勝するとかっていうのは相対的な話なわけなんですよ、だから結果であって、自分でもそうなんですけど、一生懸命勝とう勝とうと思ってて終わって、上にいなかっただけであって、別にそんな満足とかしてないです。だから予選でも楽しいし、自分的にできる技ができれば、強ければ、強い相手が…っていうので面白いんですよ。基本的に職人根性なんですよね。だから有名になろうとか、強くなって名をあげようとかいうのはないんですよ。若い時はありましたけど、もう別にそんなのはいいやって思って、関係ないですよ。

--まだ若いじゃん。

藤松:ま、そうなんですけど…関係ないです。

--ちなみに他の競技に関心ないの?柔道だのキックだの。試合したいとかはないと思うけど、そういう選手と交流したいとかはないですか?あくまで空道ルールにしか関心ない?

藤松:別に道場に来て、やりたければやりますけど…他のルールって言ったら他のルールじゃないですか?意味ないですもんね。自分たち武道だと思ってやってるので全ての局面に対して通用しないといけないわけですから、技を突き詰めて勉強ではいいですけど、そんな事しなくてもできますから自分は。

--武道やる上では、北斗旗ルールが一番いいという考えですか。

藤松:北斗旗ルールが一番現実に近いじゃないですか?プライドとかあり得ないですもん現実には。裸で金球殴ったらいけないとか。ガードポジションなんてありえないっすよ。

--じゃ今後も北斗旗でやっていくということですね?

藤松:そうですね。

--なるほど、それはわかりました。で、それはそれで、例えば柔道とかだったら木村政彦なんかみたいに…戦争で彼は残念だったけど、全日本選手権で15年連覇してやろうとかね、言うじゃないですか?連覇とか、そういうことに関心はないんですか?そうじゃなくて自分の中での絶対的なものに関心があると?

藤松:そうですね。

--ということは北斗旗に関してはある意味関心ないって事ですかね?北斗旗うんぬんじゃなくって、自分が強くなりたい?

藤松:先輩達の伝統を守らなきゃいけないとかはありますけど、それまでであって、それ以上どうのこうのっていうのはないです。全然ないです。連覇とかはね。

--なるほど。

(次回「武道」編へ続く)

 

Posted by 佐藤@那覇道場