満員電車での武道的動作に関する一考察

門間理良の日々是空道

私は国家公務員(研究職)として毎日小田急線、中央線を利用して通勤しているのだが、

先日乗客の動作にハッとさせられることがあったのでここに記しておきたい。

【事例1】

私の目の前に着座していた乗客が駅に着いた際に下車のために立ち上がった。

私は自然の流れでそのまま空いた席に座ろうとしたのだが……、

私がその立ち位置で180度向きを変えて着座しようとした間隙をついて、

女性(20代と思われる)が斜め横から滑り込むようにして、その席にすっぽり収まったのである。

私が動きを途中で停止しなかったら、私は確実に彼女(20代と思われる)の膝に着席していたであろう。

私はしばし呆然としたが、彼女(20代と思われる)は何事もなかったかのように平然と文庫を読み始めた。

私だけがそう思ったのではない。

横にいた中年男性も、「えッ?!?」という顔をしていたのだから、

その動きがぎりぎりの線を見切ったものであったことが窺える。

彼女は勝手に戦いを始めて、素早く勝利し、相手に反撃のチャンスを与えることなく、

完全に優位を占めた状況を固定化させることに成功したのである。

これは中国人民解放軍が目指している戦い方そのものではないか!

彼女は中国人民解放軍を研究している私相手にそれを実践してみせてくれたのだろうか。

【事例2】

事例1同様、私が立っていた位置の眼下に着席していた通勤客が下車のために立ち上がった。

その次の瞬間、私の身体の前に左斜め後ろから1本の腕が視界に飛びこんできたのである。

その伸びてきた腕(右腕だった)は、私の前方(空席)への動きを制止しながら、

本体である老人(80代前半と思われる)が、自らが腕をねじ込むことで作り上げた空間を回り込んで着座したのである。

腕の動きに比して身体の動きはぎこちなかったものの確実に連動はしており、それを遮るのは憚られた。

私自身は事例1の時と異なり、その時は元々着席する意思はなかったとはいえ、その老人(80代前半と思われる)の

①腕を出しながらの私の動きの制止、

②その直後からの私と座席に作った空間への身体の入れ方、

③そしてなによりも間合い的には完全に遠い位置にあったにも関わらず、そのポジションを奪おうとする強固な意志力、

に純粋な感動を覚えたのである。

日常生活において真似をしたいとは思わないが、勉強になる動きであったことは間違いない。。。。

2つの事例をどのように研究と空道に活かすか、課題が生まれたと感じた次第である。

日々是研究、日々是空道。。。