第34話:怒濤の3級挑戦編(その1) =祭の前の高揚あるいは焦燥=

門間理良の黒帯への階段

 2008年6月7日(土曜日)、私にとっては昨年末以来、約5か月ぶりの昇級審査である。昇級は武道をやっている者にとって大きな楽しみであり、モチベーションともなっているのだが、「昇級審査が大好きでたまらない!」という人はどれだけいるだろうか? 特に大道塾では…。

 私は、「昇級審査なんて大嫌いだあ!」と夕日に向かって泣きながら走っていくほどではないにしても、それほど愉快なこととも感じていない。

 だって…、大道塾の昇級審査って痛いんだもん……。まあ、40歳を越してるオヤジが拗ねてみても始まらないのだが…。

 かと言って、あまり簡単に取れてしまうと、その級なり帯なりに誇らしい気持ちもわいてこないし、それはそれで難しいものだ。

 緑帯になってはじめての昇級審査ということは、顔面ありの格闘空手ルールで挑むことになる。マススパーでは既にずっとこなしてきてはいるのだが、本気モードでの顔面ありは、これまでなかったので、やはり緊張する。

 こんな心境の私に声をかけてくれたのは松並先輩である。

「な~に、大丈夫ですよ。審査なんてスパーリングと同じですからねえ。ナハハハハハ 😆 」
(私は松並先輩のハハハを、脳内補完してナハハハと聞くようになっている)

 皆もよ~くご存知の軽い感じで勇気付けてくれる。親身に勇気付けているのか、他人事だと思って軽く言っているのかは不明だが、こっちも簡単に乗せられて

「そうだ、試合ほどではないんだ! いつもやってるようなもんなんだ」

と気持ちも軽くなる。

 でも実際やってみると…、

「松並先輩の嘘つき~!!! 😥 」

まあ、今回はそんな話である。

 堀越さんの呼び出しに従って1列3人で並んでいくと、道場の後ろまでぎっしりだ。最初はいつものように基本と移動の審査だ。

 本日号令をかけてくださるのは槙山先輩である。

 久しぶりに道衣に袖を通されたという話だが、そんな雰囲気は微塵も感じられない。もともと男前の槙山先輩だが、かける気合もまた格好いい。こちらも思わず気合が入った。

 なんとか基本と移動が終わると、組技・関節技だ。緑帯以上が2人1組となり、東先生の指示に従って前方へ投げる技、後方に倒す技をかけた。その後は絞め技(投げにきた相手の背後から送り襟締め)とミドルをキャッチして倒してのアキレス腱固めだ。これは茶帯だけでなく緑帯も一緒になってやった。

 この部分は東先生によるワンポイント講座的な印象だ。法律でも施行して周知期間が設けられるものもあるくらいだから、現段階ではこれはこれで良いのだろうが、将来的には何らかの改良があると思われる。

 それが終わると、次はいよいよ組手審査である。流れとしてはまず昇級審査があり、最後に昇段審査となる。そこで昇段の先輩方は2階に降りてアップしておくようにとの指示があり、色帯組が3階に残された。

 本日は6人の方々が昇段審査を受ける。総本部BCからは太田・木下・杉本・村上の4先輩。それに他支部からは三段昇段を目指す59歳の方に、1人でいらっしゃったらしい先輩だ。

 6人が受けるということは、年齢による組手数の違いはあるものの、色帯組が大体12回はお相手する計算になる。となると、2~4級の者は2回ほど顔面ルールで昇段組の方々のお相手をすることになりそうだとの予感があった。

 それに同じ帯色の人とやることは、松原先輩の組み合わせ方針から伺っていた。ということで、事前予想として、私は昇段のお相手としては体格などから杉本先輩・村上先輩と、同じ色帯としては寺崎さんと計3回戦うことになるのでは、と考えていた(他支部の方の情報はもちろんなかった)。

 いずれも強敵であることは間違いない。寺崎さんとは、着替えのときに一緒だったので、「当たると思いますよ」などと声をかけていたのだが…。

続く…。