平安孝行「地方からの挑戦」(後編)

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──:次に、パンクラス参戦について伺います。あそこも昔ほどプロっぽくなくなってきてるじゃないですか。全国の総合系のいろんな流派から出てきてるから、うちにとっても出やすい状態じゃないかと思うんです。平安君の場合は、パンクラスに出たいと思ったきっかけは、どういうものですか?

平安:時間あいたら今年中には出たいな、と2年くらい前から思ってたんです。

──:なるほど、世界大会の日程と自分の年齢があるからな。その希望は、塾長には話したの?

平安:今回は出たいんですということで、話は通しました。昔から先生の方からも、「出たいなら出ていい」と言われてたんです。

──:パンクラスに今回出ることの意味っていうのはどうですか。どうしてパンクラスを選んだの?他にもいくつか舞台はあるじゃない。

平安:パンクラスを選んだのは、関西の大会が10月の最初だからです。11月に北斗旗の無差別があるので。

──:そっちも連続で出るんだ。偉いねえ。

平安:はい。やっぱり時間的に余裕があるので10月だったら一番出やすいかなと思って。しかも大阪だし、出やすいかなと。
パンクラス出るのは大道塾のアピールと、「大道塾のために」っていうのはないんですけど、それでも僕は「大道塾知らない」って言われるのは悲しい。だから、大道塾の宣伝です。僕が大道塾じゃなかったら流派の宣伝なんてしたいと思わないでしょうけど。

──:以前山崎選手がパンクラス出たことがあって(1999年9月)、あの時僕も見に行ったんですけど、僕の素直な感想を言っちゃうと危機感を持ったんですよ。山崎選手は大道塾に入門する前、西さんの慧舟会が主宰したジャケットマッチとかに出てて、菊田選手や村上一成、イーゲン井上選手、郷野聡寛選手ら錚々たるメンバーとトーナメントで競ってましたよね。だから、パンクラスもしくは総合とか出てる選手とやっても、山崎選手はそう簡単には押されないと思ってたと思うんですよ。ところがパンクラスのそのときの戦いは裸で、しかも拳でなく掌底でというルールだったんで、全然勝手が違った。空道から面をはずしたただけというのとはかなり違うルールで、しかもそれについては他の選手は数年間の試合を積んできているので、体力的にも技術的にもかなりで差がついていた。僕らは総合系に挑戦するとしたら五分にやれるのは山崎選手だけだろうと思っていたので、窪田選手に掌底がまったくきかなくて、しかもタックルでほとんどテイクダウンされたのには、本当にショックを受けました。
山崎選手が空道に専念していた三年ほどのブランクで、パンクラスをずっとやってきた人たちはそのルールの中で進歩したんですね。それをふまえても今回はさらに自信があって出るんだと思うんだけど。そこはどうですか?こういった歴史を知っていてもらわないと、今回の平安君の挑戦の意味が分からなくなるよね。

平安:そうですね。そりゃあ絶対的な自信があるかっていうとそれは・・・

──:試合だからね。勝敗の結論は分からないんだけど、どんなレベルで総合の選手が打撃や寝技をやっているのかを知っているというのは挑戦の最低限の条件みたいなもんだから。平安君はそれをどう評価しているのかを教えてもらえますか?

平安:僕の仲良いプロシューターの人たちからは、ゴーサインは一応出してもらってはいます。(パラエストラ広島の)富樫(健一郎)さんとか組み技だったら(広島のトランクケイラス=TKの)岡田(剛史)さんとかかなり上に行ってる人に。藤田善弘先生とか柔術の全日本チャンピオンとかとも稽古をやってて。

──:そっちでもどの程度行けるか確認してもらったの?

平安:はい。北斗旗と一緒で、勝てるかどうかは当日までずっとせめぎ合いですけど。だから自信があるかというのは・・

──:個別の試合の結果については、それはねえ。どの試合でもそうだと思うけど。

平安:自信があるとかっていうのはないんですけど、それでもレベルはだいたい分かってるんで。

──:それを聞いて安心しました。以前、修斗のルールで総合の対戦して、修斗の選手だったら常識としてやりとりしている技術、細かいことあるじゃない?グローブ掴んだりとか、あの手のことを簡単にやられてたりして。ああいったことは柔術の技術と同じで知っているかどうかだから、直前の情報収集が常識としてちゃんとできているかどうかの問題でしょ?パラエストラ松戸の選手はうちに出てくる時に本部に出稽古に来られたそうだし、最低限のことはちゃんと稽古してきてくれたんだから、こっちも最低限のことをやってないと向こうにも失礼だよね。それをやってくれてるんだったら、僕はもう心強いです。

平安:実は僕、バーリトゥードみたいなことはもう10何戦くらいやってるんで。

──:へぇ?、知らなかった。それはどこで?

平安:(「東」ではなく)○先生の○○会とかで(笑)。長崎の。

村上智明支部長:事前には知らなかったよお。後から聞いたんだよなあ。

──:それはせめて後では言わないと(笑)。

村上:前は外にばかり目が向いてるし、どうしたもんかと思ってたんですけど、こいつが大道塾の看板しょって戦うっちゅう気持ちがあるんで、出来る限り応援しようっていう気持には今はなってます。今回のパンクラスもその延長で。塾長にも認めていただいてるんで。いろいろドタバタはあるんですけど、ドタバタはあった方がおもしろいから。

──:今年は1月29日に「第一回中国修斗グラップリングトーナメント」広島県立総合体育館、藤田流柔術所属として参戦、ライト級12名中第三位)っていう寝技戦に出ているんだね。じゃあ、ちなみに、そのバーリトゥードー戦なんかは、どんな感じだったの?

平安:あ、結果から言うとですか?

──:内容と反省点と含めると。

平安:全局面打撃で、とにかく…

──:へえ、打撃で圧倒しようとしたの?

平安:はい。寝技の練習はやってたんですけど、やっぱり全局面で全て打撃で…

──:殴っていったと?寝技で殴ってて怪我はなかったんですか?

平安:怪我はなかったです。

──:ちゃんとナックルで殴ったの?

平安:はい。三年前に、ウェルター級の新人王の佐々木君っていうプロシューターの人と戦って、判定では1回負けてますね。

──:なるほど。寝技で殴るのは大道塾では一応反則となってますけど、最近は総合の選手はガードの体勢からミット打ちとかしてますよね。そういうのも練習はしているの?それは特段関係ないんですか?

平安:今はプロシューターの人と一緒にやってるんですけど、昔はやってなかったですね。ぶっつけ本番で。昔はシューターとかの人とか、あまり知り合いにいなくて、一番ひどかったのは広島に戻ってきた時だったんですけど、どんどん輪を広げていって、練習はかなり充実してきましたから。今はやってます。

Posted by 佐藤@那覇道場